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アラムナイ活動及び研修レポート

ハワイE R 研修記 アメリカと日本のE R

武田 慧太郎


 今回私は野口医学研究所とハワイ大学医学部により2014年5月24日から3週間ホノルルにあるクイーンズメディカルセンターでobservershipを行う機会を頂いた。日本では救急医療の充実が社会問題として注目されている。こうした問題への解決策として、アメリカを手本として24時間患者を受け入れるERが各地に設立されてきている。これまで私は4年間を内科医として、またERで2年間救急医として勤務経験を積んでいた。日本での勤務経験とハワイでの実習経験を元に、アメリカERの日本ERの違い、及びアメリカERの日本への導入の可能性について私見を述べてみたい。


クイーンズメディカルセンターは急性期病床505床、スタッフ数は3,000人、医者1,200人を誇るハワイ最大の急性期病院である。またERは西海岸以西では最大規模を誇り、地域唯一のtrauma centerとして外傷患者の診療も積極的に行っている。一方私が日本で勤務していた救命センターは550床の急性期病床を備えていた。


では具体的にERのシステムにおける日米の違いとは何なのだろうか。


まずERに入って最初に気がつくのは施設規模の大きさである。ERを受診し、ある程度重症と判断されると患者はmain roomと呼ばれる部屋に通される。main roomには31床の個室ベッドがあり、全てのベッドに酸素吸入器や心電図モニターなどが備え付けられており十分な検査や治療を行う事が出来る。一方軽症患者を診察する場合には5個の診察室と4床のベッドがあり、main roomとは完全に切り離され診療を行っている。


施設規模の大きさに対応して、勤務しているスタッフの数も非常に多い。ERには約30人の救急医が所属しており、8時間シフト制で働いている。看護師の数も多く、また薬剤師、放射線技師、呼吸療法士など様々な職種がER専従で勤務している。一方軽症患者の診察はmid level providerと呼ばれるNurse Practitioner、Physician Assistantが医師と行っている。
彼らは患者診察や検査、処方、ある程度の治療なども自分で行う事が出来るため、医師は彼らと協力する事で大量に受診する患者を効率よく診察出来るようになっている。

 

こうした大規模な施設とスタッフを要するだけあり、患者数は非常に多い。1日の総患者数は130人強との事であった。患者層も幅広く、感冒や打撲、赤ん坊の発熱、心筋梗塞、交通事故と様々であった。

 

上記の3点がobservership中に私が気づいた日米の差異である。ではこのような大規模なERをそのまま日本に導入する事は可能なのだろうか?あくまでも私見だが、非常に難しいと思われる。以下にその理由を述べる。


まず最初に場所の問題がある。クイーンズメディカルセンターは個室ベッドだけで30床以上を持つ。日本ではさらに大きな規模の病院でも、ERの重症患者ベッドが10を超える施設を探すのは非常に難しい。もしERをアメリカと同じ規模にする為には大幅な施設の増改築が必要だろう。


2つ目はスタッフの数と役割である。日本のERでアメリカと同程度の数のスタッフを確保するのは難しい。まして医師の数を同程度に増やすには数十年かかるだろう。mid level providerを作り彼らに同じ様な処置を行う権限を与える事も、法律の問題があり困難だろう。


最後に、ERを受診する患者の数と層の違いがある。アメリカでは金銭的問題で病院を受診出来ない、clinicの予約受診が数週間先で待てないなどの理由で多くの患者がERを受診する。そのためアメリカではERが医療を求める全ての人の玄関として機能している。アメリカでERを受診する患者数が多い理由のひとつはここにあると思われる。一方日本はほとんどの病院やクリニックの受診は容易であるため、上記のような患者がERを受診する事は
稀である。従って日本では比較的少数の急性期疾患の受け入れがERの役割となっている。


金銭的、社会的理由からアメリカと同じERを日本に作り上げるのは非常に困難だろう。またそれぞれの社会がERを必要とする理由も異なっていると思われる。しかしそれでも、患者に24時間医療を提供出来るERを日本に作るためにはアメリカからまだまだ学ぶ事は多いだろう。
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Acknowledgement
ハワイ大学医学部、クイーンズメディカルセンター、野口医学研究所から与えて頂いたobservershipはアメリカの救急医学について知る素晴らしい機会でした。救急observership の機会を与えて下さった町淳二先生、ジェリス ヘッジズ先生、サトル イズツ先生にこの場を借りて感謝の意を表させて頂きます。また丁寧に私を指導して頂いた救急部のハワード クレマー先生、中村 陽子先生にも御礼申し上げます。私はこの度のobservershipが医
師人生の中で大きな一里塚となると考えています。今回得た知識を用いて、自分の医師人生の目指すべき到達点に向かって進んで行くつもりです。そして将来に渡り、今回知り合った方々との関係を続けられる事が出来れば幸いです。

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