NOGUCHI NEWS LETTER
米国財団法人野口医学研究所ニュースレター 
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Vol.4  2002.6
渡米報告
 
都立豊島病院 歯科口腔外科 研修医
鈴木 エリ
アメリカと日本の歯学の違いにおいて、まず驚いたのは患者さんのDentistに対する尊敬心だった。大学病院ということもあると思うが、自分のDrを尊敬し、信頼している様子がわかった。四年制の大学を卒業した後、さらに4年かけて専門分野をまなび、国家試験にうかって免許を取得した後に3年かけて専門医のコースをとっていることも関係しているのだろうか。治療の内容も、保険制度の違いも大きく、感覚的には日本の自費治療と同じような印象を受けた。Drの裁量が多く設定されている感じを受けた。
 ただし、歯科の分野で専門医のコースをとろうとすると、大学に多大な学費を納めなくてはコースに入ることができない。口腔外科のように、6年かかるものの学費はかからないコースもあるが、保存、補綴、ペリオ、矯正などのコースはコース終了まで大体2,3年はかかる。ローンを組んだり、軍に所属し学費を減免してもらう手段もあるが、多くのアメリカの学生は学費ゆえに専門医のコースをあきらめざるをえないと聞いた。そのような事情もあり、ペリオのコースに限って言えば、2/3が外国籍の学生である。大体の外国籍の学生は卒後数年臨床経験をつんだ上で渡米しており、母国で専門医を取得してから再度Pennのペリオのコースに入ったものもいる。当然、学生のレベルもまちまちだ。
 Fellowと遜色ない技術、知識の持ち主もいれば、卒直後の学生もいる。ある程度臨床経験があり、母国でそれなりのレベルで治療を行なってきたものには、物足りない面も多々あるということだ。教育システムとして素晴らしいのは、lectureとclinicの両立である。週に2,3回早朝7時(ほとんどの場合は7時半から始まることが多いらしい)から講義があり、その後11時からclinicを行ない、一時間の昼休み(ほとんどの場合、一時間きっちりとることは難しい)、午後は2時から外来診療をこなし、また週に何回かは4時、5時からセミナーや症例検討会がある。大量の文献に日々目を通し、それを元に治療を組み立ててゆく姿勢は、日本では(少なくとも、私の母校では)目にしたことがないものであった。
また、そのような忙しい生活の中でも学生のteaching dutyもある。コースの2年生から始まり、卒前の学生に専門分野の指導を行なうのである。これには、いい点も悪い点もある。教えることにより、自身の弱点を知ることもできるが、教える側自身が卒直後で経験が浅いと、学生と教官のレベルがあまり変わらない場合もありえるからだ。DADEの学生にも同様のシステムであり、自身の治療の各ステップで口腔内写真を撮影し、教官のチェックを受けなくてはならない。治療の組み立て方も同様に、教官、同僚からチェックをうける。
ただ、欠点はある。卒後の専門教育である分、基礎は教えてくれない。極端にいえば、伝達麻酔の打ち方もわからないでコースに入ったら自分で勉強するしかないのである。それを考えると、卒後ある程度研修を行なった後にコースに入るのがいいと思われる。
日本で開業した後にDADEのペリオのコースに入った菅野先生から含蓄深い言葉をきいた。確かに、学費は高い。だが、金額が教育に見合うかは考えてはいけない、ということである。テロ直後の渡米であり、旅立つ直前は不安もあったが、実際に行ってみるとハロウィンの飾り付けがないこと、空港のチェックが厳しいこと以外はあまり影響を感じなかった。だが、帰国の次の日からアメリカによる報復攻撃が始まったので、ちょうどいい時期に渡米することが出来たのだとほっとしている。アメリカの歯科を訪問して感じたことは、自分の今いる病院の選択が決して間違っていなかったことである。アメリカに行ってから始まるのではない。日々努力をし、その延長にあるのだということを強く感じることができたのも収穫のひとつである。
 今回お世話になった野口医学研究所のみなさま、本当にありがとうございました。