NOGUCHI NEWS LETTER
米国財団法人野口医学研究所ニュースレター
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Vol.4 2002.6
免疫療法について
東京大学先端科学技術研究センター 教授
江里口 正純
免疫系の根本的な働きは、自己と非自己を認識し非自己を排除することです。免疫療法を必要とする病態として、1)ウイルス、細菌、原虫などによる感染症、2)アレルギー、3)腫瘍(癌)、4)臓器移植における拒絶反応、5)自己免疫疾患などが考えられます。これらの中で、私どもの施設で行っている、江川滉ニ先生の開発された癌に対する免疫療法の方法についてお話します。癌免疫では、免疫細胞が癌抗原を非自己と認識すれば癌細胞を障害することになります。細胞の癌化により、異常なタンパク質がつくられ、癌抗原となりますが、その抗原性は弱いものです。癌免疫では主に細胞性免疫が働き、免疫細胞の中でTリンパ球(T細胞)と樹状細胞(DC)などが関係しています。T細胞には、異常な細胞を障害するキラーT細胞(細胞性免疫ではTh1)があります。DCは抗原提示細胞で、CTLを直接活性化し、また、Th1を活性化して
IL-2,IF-γなどのT細胞活性増殖因子を産生、CTLを活性化し増殖させます。こうして、活性化され増殖したCTLが癌細胞を障害します。CTLは、細胞表面にあるT細胞受容体への抗原(組織適合抗原によって提示)の結合による刺激、CD8分子からの刺激、CD28分子と結合するB7分子による刺激などで活性化されます。実際の免疫療法の方法は、患者さんから採取した末梢血からT細胞を分離し、活性化し増殖させるため、1)IL-2による刺激、2)CD3分子の抗体による刺激、3)CD28分子に結合するB7分子による刺激を用います。さらに自己の癌細胞が入手できる場合、そこからタンパク質を抽出してDCに取り込ませ、抗原提示をさせ、培養中のT細胞をさらに活性化させるという方法もあります。こうして、活性化され増殖したT細胞を点滴静注にて患者さんに戻します。以上、今回は癌免疫療法の方法について簡単に述べましたが、その有効性についてのお話は別の機会に譲りたいと思います。
日本医療の現状と将来
NHK 解説委員
飯野 奈津子
日本の医療制度は、今、大きな曲がり角を迎えています。少子高齢化と経済の低迷という社会の変化の中で、いかに医療の効率性を高めるかが問われてきたからです。そうした中で、政府は、破綻寸前の医療保険財政を立て直すための改革を打ち出しました。保険料と患者の窓口負担の引き上げ、そして、診療報酬の引き下げと老人医療費の伸び率を抑えるためのガイドラインの策定です。小泉総理が掲げる三方一両損、つまり、国民、患者、医療機関が痛みを分かち合う内容です。しかし、この改革は、当面の財政対策にすぎません。医療全体のレベルアップをはかり、医療を提供する側と医療を受ける側がともに満足度を高められる医療改革が、今こそ必要だと思います。
日本の医療制度で最も問題なのは、どんな症状の患者が、どのような医療を受けて、どうなったのか、そしてその費用はいくらかかったかその情報分析が行われていないことではないでしょうか。もしそうした分析が行われたら、何が医療の無駄なのか明らかになり、質の高い医療を実践している医師を評価することができるように思うからです。そうした情報を患者にも公開して、質の高い医療を提供する医師が報われるようにすれば、医療全体のレベルアップにつながるはずです。その際、私たちが考えなければならないのは、質の高い医療にはお金がかかるということです。質の高い医療を求め費用を負担するのか、負担を抑えてほどほどの医療水準でがまんするのか。これからは、私たち国民が選択しなければならないのだと思います。