NOGUCHI NEWS LETTER
米国財団法人野口医学研究所ニュースレター 
■発行 米国財団法人 野口医学研究所 東京都港区虎ノ門1-20-7興武虎ノ門ビル5階
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Vol.2  1999.10
野口人間ドックについて
野口医学研究所理事、事務局長兼クリニック総婦長
小柳 乃里子
(目的と意義)
 前回は、野口式人間ドックの歴史と特徴について述べた。今回は、人間ドックの目的と意義について野口式人間ドックの実状に触れながら述べたい。
 「人間ドック」という言葉は、日本では知らない人がいないくらい、一般に行き渡っているが、その由来は「船舶のドック入り」から来ている。長い航海をおえた船が、定期的な点検を受け、悪いところを治し、また、再び航海に出ていく。これが安全な航海に絶対必要なステップと考えられ、長い航海を人生行路になぞらえ、定期的な検査を「人間ドック」と呼ぶようになった。職場や地域で大多数の健常者を対象にして行われる簡単な「集団健康診断」よりかなり詳しい検査を集中的に受けることができるということから、この二つの言葉を区別している人もいるが、同意語として使っている人も多い。


 アメリカには、「人間ドック」という言葉はなく、「Annual Health Check-up」「Health Examination」「Comprehensive Preventive Health Care Program」ということで健康診断を行っている施設を時々見かける。しかし日本の3-5倍高い医療費、アメリカ人の医療に対する考え方の違い、会社の健康診断に対するサポートもなく、保険会社の医療費のコントロールなど様々な問題から、日本で受けるような「人間ドック」は、ごく一部の裕福な人々が適宜利用しているだけである。日本のように、大多数の人が、会社、或いは地域から経済的に支援されているということはない。

 IML(International Med-Line, L.L.C.の省略で、人間ドック事業を直接経営している、財団法人野口医学研究所の関連会社)では、アメリカにおいて、「人間ドック(Ningen Dock)」を商標登録し、質の高い人間ドックの普及に勤めている。「野口人間ドック」は、海外に住む日本人が日本語で医療サービスを受けられる利点だけではなく、どこの「野口人間ドック」でも同等の良質な医療を提供し、受診者のQuality of Lifeの向上を図り、心身両面で安定した生活を営める様にプログラムされている。
 人間ドックが始められた当時は、「一週間ドック」が一般的であった。一週間ドックは、検査項目が多く、各科の専門医による診断が受けられると言う利点はあるものの、日数が長く、費用も高いので、誰もが気軽に受けられるものではなかった。今日では、医療診断機器の進歩や、検査の自動化、コンピューターの活用などにより、検査結果の出るまでの時間が短縮され、「一泊二日ドック」と「日帰りドック」が主流となった。野口人間ドックは、日本式の利点を取り入れながら、医師による問診や診察に十分な時間をかけ、人間ドック専用の施設、最新の診断機器を駆使して、懇切丁寧な検査結果の説明とアフターケアーサービスで、「半日ドックあるいは3時間ドック」で、胃カメラから、大腸カメラ(準備は前日夕方より)まで含むコースを午前中で終了する事が出来る。午後からは、午前中に実施された検査結果をもとに個人の背景を踏まえた健康上の問題点がリストアップされ、生活指導や追加すべき検査が明確にされる。今後健康上の問題を解決していくためには、何が重要なのか、現在の生活をどう変えていくことがより健康増進につながるのか、医師と充分に話し合う機会が準備されている。
 人間ドックの目的は二つある。一つは、病気を早期発見し、早期治療する事である。もう一つは、病気の危険因子と危険因子に影響を及ぼす生活習慣の有無をチェックし、その危険因子を除くか、あるいは、問題のある生活習慣を改善する事である。検査により健康度を評価し、より健康的な生活習慣を獲得し病気を未然に防ぐのである。これまでの人間ドックでは、検査で異常な所見をみた人のみが指導の対象とされ、多くの人は、異常無しと簡単に片付けられてきた。今後は、これらの異常無しの人々に対しても健康を害する危険因子を出来得る限り見つけだし、助言、指導する健康危険度の評価、予測が益々重要になる。ライフスタイル(生活習慣)改善の為の助言、1次予防(喫煙、飲酒、運動不足、不適当な睡眠、肥満等)の指導にも、野口人間ドックは力を注いでいる。
癌の種類と例数
次に、人間ドックを受ける意義について考えてみたい。人間ドックでは、色々な病気が発見されるが、最も重点がおかれているのは、死亡率の高い病気を早く見つける事である。日本人の死亡率の高い病気は、癌、脳卒中、心臓病の三つで、1996年の統計では、国民の3人に2人は此の何れかで死亡している。ところが、これらの三大病もその他の生活習慣病も、病気の始まりにはほとんど自覚症状を伴わない。長い間にじわじわと進行し、気付いたときにはかなり悪くなっている事が多い。従って、症状の現れる前に発見する事が大切である。 「最近、どうも体の調子が良くないからドックにでも行こうか」という人がいるが、「調子が悪い」「痛い」等の症状のある場合は、医療機関で、症状に焦点を合わせた、検査や治療を受けた方がよい。人間ドックは、特別な症状が何もなく、「自分は健康である」と思っている人が受けるところに意義がある。日本人の死亡率の高い病気として、癌が最も多いが、人間ドックで発見される場合、「早期癌」である事が多い。早期の胃癌や大腸癌では、大規模な開腹手術をせずに、内視鏡下で切除可能なケースがあり、患者さんの身体への負担も軽く、仕事にも早く復帰出来る。Noguchi Ningen Dock & Clinic(Englewood)で、1994年8月の開設以来、今日までに発見された癌の症例数は32例である。その種類と数をグラフで示すと右の通りである。それらの9割以上が早期癌であった。

 今回は、人間ドックの言葉の由来、人間ドックの目的と、何故人間ドックを受けるのかについて、自施設の症例を参照し乍ら述べてきた。これらの基本的な人間ドックの目的と意義を踏まえて、野口人間ドックがアメリカを始めとする海外で開設されていることの重要な意味は、人間ドックに携わる日本とアメリカ、日本と諸外国双方の社会、文化の体験を持つ医師並びに看護婦、その他スタッフが受診者のQuality of lifeの向上を共に考え実践する姿勢にあることを理解頂き本稿の期する所としたい。
 次回は、人間ドックの受け方、施設の選び方、検査内容等について紹介する予定である。