| ECFMG certificate(アメリカで臨床医学留学を始めるのに必要な、レジデントの免許)の獲得に、従来のStep1(基礎医学)Step2(臨床医学)、ECFMG English TestもしくはTOEFL550点以上といった条件に加えて、新たにCSA(clinical skill assessment)の合格がFMG(米国外の医大卒業者)には義務づけられたからです。
CSAとは
Clinical Skill Assessment の略で、1998年7月により新たに導入された、ECFMG certificate取得に必要な臨床実技試験です。各診察室で待っている実際の患者のように振る舞った11人の模擬患者(standerdized patient;SP)を各15分間で問診し、身体所見をとり、各SPにムンテラした後、10分で病歴、身体所見、鑑別診断5つ、検査5つを所定の用紙に記載し、その両方が評価されるといった実技試験です。従来のStep1、Step2、English Testを合格すると、受験資格がもらえます。世界中でPhiladelphiaのCSA Centerでしか受験できません、試験は1年中やっているそうです。
その評価は、
1. ICE (Integrated Clinical Encounter)
i: DG (Data Gathering)
ii: PN (Patient NOte)
2. COM (Communication Skills)
i: IPS (Interpersonal Skills)
ii: ENG (Spoken English language proficiency)
といった、1.2.という2つの軸に沿って行われます。各パラメーターに関してはあらかじめ決められたCheck List(別記)に沿って行われます。この2つの軸両方で合格点を出して始めて“PASS”の評価がもらえます。言い換えれば、片方でも合格点に達していないと、“FAIL”となってしまいます。具体的な得点は結果には出ません。このうち、PNはhealth care professionals により評価されるのですが、その他は模擬患者(SP)により評価されるのです。文字どうり患者さんとの一対一の真剣勝負になります。結果は、各パラメーター(DG,PN,IPS,ENG)が10名の患者で平均されて最終的な各パラメーターの得点となり、合否が判定されます(11名のうち1名は研究用で評価されない。しかしどれがその1例なのか受験者は知らされない。)また、ENGに関しては、TSE(Test of Spoken English)で35点以上とれれば合格レベルであろうということが書いてありました。TSEはTOEFLと同じく、Educational Testing Service(ETS)という組織がやっています。私は、ハワイ大学externshipの前にTSEを受けることが不可能だったので、TSEを受けませんでした。
申し込み
CSAは Step1、Step2、ECFMG English TestもしくはTOEFL550点以上、全てを合格していないと受験できません。以上全てに合格した後、ピンク色の所定の用紙(706)の記載事項を満たし、受験料$1200(高い!!!)とともにECFMGに送ると、数週間後に大きな小包が送られてきます。中には、いくつかの書類の他に、ビデオテープもはいっています(ECFMGのホームページでも同じ内容の映像がダウンロードできます(http://www.ecfmg.org)。その説明に沿って、電話もしくはインターネットで受験日の予約ができます。私はインターネットの方で予約しましたが、特に問題なく、簡単に出来ました。また、受験日は一度設定としてしまうと、特別の場合を除いてCancelできないので要注意です。日付の選択は書類がacceptされてから4ヶ月以内、CSA受験は1年以内にしなければ生けません。
当日
CSAは1年中やっているというものの、私が受験したシーズンには実際は週3回しかやっていませんでした。一緒に受験した人は私を含めて10人、ドイツ、ブラジル等色々な国より来ていました。8:30より試験官がregistrationと簡単な説明を行い、その後、CSAのビデオにも出ている部屋で、Dr.がスライドを見ながらテストの説明と、実際に各診察室に置いてあるのと同じ道具で使い方の実演をしてくれました。パンフレットとの違いは、BPは必要に応じて計っても良いが呈示された値の方を使うこと、orthostatic hypotension testはdiagnostic work upに含めても実測しても良い、この2点でした。
試験
CSAのビデオに出ている様に、広い廊下の両側に12箇所ずつ、合計24箇所の診察室と、各部屋の前についたての付いた机が備わっていました。今回は10名の受験者がその11個の診察室を順番に廻ることになります。各診察室のドアにはDoorway Infomation というID、主訴、バイタル、各ステーションでのタスクの書いてある紙が付いていますが、覆いがあり、見えないようになっています。「始め」の合図でその覆いをスライドさせ、読み終えたら診察室に入室です。ここからもち時間15分は始まっています。氏名の確認、自己紹介をしてから問診(主訴、現病歴、既往性、アレルギー、薬、社会歴、家族歴、ROS;必要事項目のみでよい)をとり始め、身体所見(主訴に的を絞り、focused physical examをとる。全身の所見をとっている時間はとうてい無い!)をとり、自分のImpression、検査方針を話し、挨拶をして部屋を出ます。早く出れば出るほどチャートを書く時間が増えるのですが、私は毎回時間がおしていて、「残り5分」とアナウンスが入る時点で、大抵身体所見をとっていました。部屋を出てからも時間との戦いです。Patient Noteといわれる所定の用紙(別記)に病歴、身体所見、最大5つの鑑別診断、最大5つのdiagnostic work up(検査、直腸診/生殖器、女性の乳房の診察等)を記入しなければなりませんでした。「残り2分」でアナウンスが入ったのですが、時間はいつもフルに使っていました。休憩は4人目の患者を終了したところで30分の昼食休憩、8人目の患者を終了したところで15分の休憩となっていました。そして11人目を修了すると晴れて自由の身です。後は結果を待つのみ...。試験は大体合計で6時間程度かかりました。
以上がCSAの大体の説明ですが、大枠はつかめたでしょうか。これから、感想と私が立てた対策とそれに対する評価を述べたいと思います。
問診;
採点項目を見れば判るように、症状に関して1.location, 2.quality(例 deep, sharp, stinging etc.), 3.quantity or severity(例 pain scale で 5/10), 4.timing(onest, duration, frequency), 5.aggravating or relieving factors, 6.associated, manifestations, 7.prior investigations, 8.prior treatment and response, 9.radiation to another site, 10.situationなどを聞いたかが、チェック項目に従って採点されます。私は主訴に関しては以上の点を聞くように心がけました(Ferri p24参考)。普段の問診から以上の10点を聞けているかどうか、自分の取った問診を他人にcheckしてもらうか自分でcheckするのが一番のtrainingではないでしょうか。というわけで、何を聞いたかが評価されるわけで、診断が判ったからといってクイズのようにそれで終わりにしてはいけません。
ROS;
Review of systems。日本にはない、臓器別の全身に関する質問項目です。これを質問することで、全身くまなく見落とし無く系統だって診察できるというわけです。私は、Dr.Steinより頂いたFlorida大学のものを用いています。私も最初戸惑いましたが、大部分の日本の医者にとっては「何だそりゃ」といったものではないでしょか。試験では例えば肺炎の患者には呼吸器のROS(cough, wheezing, sputum quantity, color), shortness of breath, pain associated breathing etc.)を尋ねるといったことが必要だと思います。focused H&P(history and physical examination)とあるので、本当に全身のROSをとっている時間の余裕はないと思いますが...。ともかく、各systemのROSはすらすらと英語で出てくるようにした方がよいと思います。これができるだけでもかなり違うと思います。
コミュニケーション
私としては必要以上に模擬患者(SP)にべたべたしたつもりでしたが、SPの態度はstiffで、「私は痛いのよ!」といった感じでした。サービス業としての医師に患者とのラポールは求められて当然ですが、これは非常に難しかったです。野口の津田先生もアメリカ人患者と上手くラポールがとれるようになるのは実際1-2年かかるよ、とおっしゃられていました。
英語
私は日本生まれ日本育ちです。本格的に留学を目指したのも医者になってから。従って、英語は苦手ですが、そんなことはいってられません。ハワイ大でシンガポールから来たFMGがやっていたように、「Any chest pain? NO shortening of breath?」等と大声ではっきりと短く質問することを心がけました。ただ、患者のいっていることが聞き取れなかったこともあり、listeningももっとtrainingしなければ...とハワイ大研修の後でさえそう思いました。また、患者の知っているlevelの単語で話すのが重要です。「sputum」といっても大半の患者は理解してくれません。「phlegm(フレム)」「mucus」と聞けばみんなわかるなど、私達が簡単と思っている英単語と普通のアメリカ人がわかる英単語には食い違いがあります。(他にもpi-pi = urination, du-du = defecation等)これらにハワイ研修のうちに気づき、nativeにcheckしてもらい、直してCSAに望めたのは大きな成果ではないでしょうか。
CSAで一番時間をとるのはhistoryです。限られた時間の中で効果的に質問をするには、聞きたい項目(例えば、上記の主訴に対する10項目)に対する質問をあらかじめ考え、覚えてしまうのが、bestではないでしょうか。
また、Intenal Medicine On Callの中にも優れた質問がたくさん載っていて、私はこれらを活用しました。非常に有用だったと思います。
身体所見
「手洗い」問診をとり終え、身体所見をとる前に大きな落とし穴があります。手洗いです。ハワイ大のSPDの際にも、1回診察の前に手洗いを忘れたので、当日「hand washing」とぶつぶつ繰り返し、念を押していたのですが、それでも当日の緊張のせいか、最初の患者で手洗いを忘れてしまいました。幸いそれ以降は無事、「Before examination、 I'll wash my hands for you!」とかいって各部屋の洗面台で手を洗ったのですが、皆様にも念には念を入れることをお勧めします。
Mini-Mental examination
これを覚えていないと、痴呆の評価ができません。私は完全には覚えておらず、2度苦汁を飲みました。絶対に覚えておくべきです。Ferri p166に載ってます。でも、あの短時間で、history、神経学的所見、Mini-Mentalをとって患者にムンテラしろといわれても、時間的に辛すぎると思います。出題者の意図はどうなんでしょう。
診察室の備品はビデオの通り、診察台の立て方倒し方など、ビデオをよく見て備品に明るければ時間は節約できるでしょう。日本ではあまり使わないタイプのものが多いので、要注意。特に、日本では眼底鏡、耳鏡を使える人が少ないのでは?私はDr.Steinに教わっていたので苦労はしませんでしたが、よく練習しておくといいと思います。所見がないとは限りませんから。
神経科学的所見(意識、脳神経、運動、歩行、小脳症状、感覚、DTR等)はよく練習しておくと良いでしょう。神経学的所見をとるのに慣れていないと、ただでさえ緊張するのに、やることが複雑な神経学的所見をとろうとすると、大切なものが抜けるか、大きなタイムロスになります。
準備
CSAのBookletにはSample Case10例があります。その1例1例にどんな質問をするか、どんなところに気をつけるか、(5つの)鑑別診断、(5つの)Work-upは何をするといったことをPatient NoteのCopyに書き込み、準備すると非常によいと思います。私はこれを書いて練習するのに、Internal Medicine On Call(後述)をメインに使い、重宝しました。ただし、内科のacute な problemだけしか扱っていないので、chronicなproblem、小児科、産婦人科、精神科は別の本(Ferri、Current)等を使いました。
Internal Medicine On Call. 2nd ed, Haist/Robbins/Gomella, Appleton & Langge
ISBN 0-8385-4056-2(洋書)
Practical Guide to the Care of the Medical Patient, 4th ed., Ferri, Mosby
ISBN 0-8151-3668-4(通称Ferri)(洋書)
A Pocke Guide to physical Examination and History taking 2nd ed, Bates, Lippincott
ISBN 0-397-55057-X(洋書)
1999 Current Medical Diagnosis & Treatment, 38th ed, Tiereny/McPhee/Papadakis, Appleton & Lange
ISBN 0-8385-1616-5(洋書)
CSAの最中は昼食等の休憩も含めて英語以外を話すのは厳禁となっています。
※お問い合わせは、野口医学研究所日本事務局までご連絡ください。
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