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アラムナイ活動及び研修レポート

ハワイ大学外科エクスターン研修を終えて

 

自治医科大学付属病院 石田 祐一


 私は、今回2011年10月の4週間をハワイのQueen’s Medical Centerの外科にてExtern研修をさせていただきました。研修内容としては、初日のオリエンテーションでも厳しく言われましたが、observation onlyでscrub inすることも禁止されており、手術もいわゆる外からの見学となりました。電子カルテへのアクセス権もなかったため、周りの人にお願いして、見せてもらうしかありませんでした。その様な中で、気付いた日本とアメリカそれぞれのレジデンシープログラムの利点、また、この限られたexternshipをどの様に活かすことができるかについて報告したいと思います。


まず、毎日のスケジュールですが、朝5時半からchief residentによるroundがあります。ここで、それぞれのresidentやmedical studentがそれぞれの受け持ち患者の状態をpresentationします。従って、レジデントやmedical studentは4時ごろに病棟に来て患者の状態を把握します。各レジデントの受け持ち患者数は3〜10人程度で、medical studentはそのうちの2〜4人を受け持ちます。それぞれがChief resident roundまでにpatient noteを完成させ、このroundでその日の方針を決定します。ここで驚いたのが、medical studentのpresentationです。術後の患者さんで、鎮痛・嘔気からドレーン・水分バランスに至るまでassessmentし、planまでしっかり立てられていることには大変感心しました。外科全体の受け持ち患者約40人のroundを終えるのが、7時半頃になります。手術は時間によりばらばらですが、一番早くて7時半から開始されます。Chief residentがそれぞれのresidentを症例に割り振り、7時半の症例を担当しているものは手術室へ、残りものは病棟業務や朝食をとりにカフェテリアに散っていきます。私は、前日のうちに症例をチェックし、興味のある症例に入るようにしていました。自分担当の症例が終わり、術後落ち着いたのを確認後レジデントは帰っても良いことになっており、残りの病棟業務は日中on-callのレジデントが、夕roundは、その日、当直のレジデントが担当していました。当直のレジデント(intern 1人とupper resident 1人)はpost-callつまり当直明けは帰らなくてはならないことになっており、朝、chief resident round終了後に帰宅します。


毎週水曜日はM&M conferenceとGrand conferenceが開かれます。この間、レジデントは、病棟業務や手術業務からは解放されます。M&M conferenceとは、Mortality & Morbidityの略で、経過に問題があった人や亡くなった人で、問題を追及し、今後の改善に役立てるために行われています。従って、その当事者を追及するのではなく、問題自体に焦点を当てます。しかし、どうしても発表者はchief residentやupper residentであるため、様々な厳しい質問や指摘がAttendingより飛び交います。その様な中でも、検査や治療に関して最近の文献報告が議論されるため、大変勉強になります。M&Mは、日本でももっと普及しても良い文化なのではないかなぁと感じました。


Queen’s hospitalの外科には一般外科チームとは別に外傷チームがあります。これは、外傷患者を主に診療・管理しています。救急外傷患者さんが来ると、外傷チームを呼ぶ館内放送が流れます。私も、この館内放送を聞きつけて見学に行きました。Attendingがチームリーダーとなり、レジデントが手技を担当していました。また、コメディカルの多さに驚きました。Respiratory assisstantや、IV technician, Nurseという様にそれぞれの担当がすでに配置されていました。これで、Team leaderは自分のassessmentに集中できるわけです。また、部屋のわきには、O型(-)の輸血パックが準備されていて、準備の良さに驚きました。レジデントはみんな入職時点でATLSを受講していて、プログラム側がその費用も負担してくれているということで、とても羨ましい限りです。


また、3週目にはSICU (Surgical Intensive Care Unit)のAttending roundにも参加させていただきました。医学部4年生、レジデント、フェローそれぞれが各受け持ち患者を部屋の前でプレゼンテーションしていくわけですが、人によっては一人30-60分かけてじっくり話合われます。ここでも、プレゼンテーションは臓器別に全臓器に関してプレゼンテーションされます。日本で同じプレゼンテーションをすると長すぎると言われかねませんが、正常臓器に関してもプレゼンテーションがなされます。これは、コメディカルが豊富でドクターがプレゼンテーションやアセスメントにより時間をかけることができる結果なのかもしれません。また、担当Nurseもプレゼンテーションに参加し、最後にread back、つまり、その日のプランの再確認が行われます。このroundでは、nurseも自分の意見を発言するし、Pharmacistも参加しているため、薬に関してはPharmacistも発言します。チーム医療を実感しました。


アメリカのレジデンシーの利点の一つとして、各レジデント個人の執刀症例数が非常に多いことが挙げられます。各学年の外科医を制限しているためもあるのでしょうが、日本と比較して圧倒的にレジデントの経験症例が多かったです。私が見た中で、Attendingが消化管吻合するというのはほとんどなく、担当したレジデントがほぼ行っていました。また、4年目のレジデントになると、ここ掘れワンワンの執刀ではなく、Attendingの術野展開を読んで、とてもスムーズに手術が進んでいました。これもそのAttendingと数をこなしているからできることなのでしょう。4年目のレジデントが一日で膵頭十二指腸切除術、低位前方切除術、腹腔鏡下胆嚢摘出術を縦でこなしていることもあり、手術も毎日行われています。この症例の多さはハワイ大学の特徴なのかもしれませんが、全米の外科レジデンシーにおいてレジデントの執刀症例が確保されています。


さて、ここまでアメリカの外科レジデンシーの利点を主に挙げてきましたが、日本の外科研修にも良い点が多くあります。まず、日本では、1年目で必修として内科、麻酔科、救急科等を医師として研修するため、その科に関する知識は日本のレジデントの方が豊富な印象が受けました。また、小さい手技、例えば採血・点滴・胃管留置・挿管などはコメディカルの方がやってしまうアメリカに対して、日本ではほとんどをレジデントがやっているので、日本のレジデントの方がその点は器用な印象を受けました。後、アメリカでは患者さんになると夜中4時に診察のため起こされますが、これは患者さんにとってはうれしくないことかもしれません。手術に関しては、リンパ節郭清を積極的に行う日本とそれほど積極的には行わないアメリカの手術を単純に比べることはできませんが、開腹・閉腹やアプローチの膜や層にしても日本の方が細かく行っている印象を受けました。しかし、アメリカにも器用な外科医はたくさんいらっしゃいました。


全体的に、アメリカは医学生・レジデントに対する教育システムが素晴らしいと感じました。日本でもアメリカの医学生までは無理でも、もっとプレゼンテーションを通してAssessment/Planを学ぶ方が楽しいし効率が良いと感じました。また、レジデンシープログラムに関しても、もっとM & Mやteaching conferenceを増やすことでさらなる外科医の質の向上を狙えるのではないかと感じました。


最後に、今後、外科Externに来られる先生のためにどの様にしたら、このExternをさらに有意義なものにできるかを述べて終わりにしたいと思います。手洗いもできず、患者カルテへのアクセス権もないため、朝のラウンドで患者のプレゼンテーションをするのは、他者の協力がないと難しいです。また、朝のラウンドではAttendingはついていないため、アピールする機会は少ないです。そこで、1つは出来る限り多くの手術に入り、また、なるべく、同じAttendingの手術に入ることがいいかもしれません。まんべんなく入るよりも1カ月という限られた期間内でアピールするには、できるだけ手術に入って姿勢を示し、ディスカッションをもちかけて、最終的に推薦書をお願いするというのが一番良いかもしれません。もうひとつは、患者さんではなく、病気のプレゼンテーションです。アメリカの外科レジデントは日本の胃がんの治療に関してとても興味をもっています。自分もハワイ大学のチーフレジデントから日本の胃がんのステージングと治療に関して、話をしてほしいと頼まれました。従って、何かプレゼンテーションできる資料を作っておくのは良い手だと思います。


今回、ハワイ大学外科エクスターン研修の実現にあたり、町教授をはじめ野口財団法人の皆様、また、Queen’s病院へ温かく迎え入れて下さったDr. Takanishi、Facultyの皆さま、ハワイ大学Senior Associate DeanのDr. Izutsuには深く御礼を申し上げたいと思います。そして、自治医科大学付属病院の三澤教授、坂東教授、早瀬先生を始めとした教職員の皆さま、また、快く見送って下さった同期の先生方にも大変感謝しております。今回の経験をこれからの私の医師人生に上手く活かせるよう、これからも精進していきたいと思います。

 
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