本年11月2日から27日まで、ハワイ州ホノルル市のクアキニ病院で研修する機会を頂き、オブザーバーとして、内科入院を3週間、家庭医療外来を1週間見学させて頂きました。以下に研修で学んだこと、日本の医療と違い印象に残ったことを御報告させて頂きます。
研修全体について
アメリカの医療についていろいろと聞いていましたが、実際に見学して、初めて分かることが多くありました。また、最初の一週間は緊張しましたが、フレンドリーな方が多く、徐々に慣れる事が出来ました。初日に、チーフレジデントの方や秘書さん、先生方から説明があり、見学中の予定や、病院のこと、アメリカの医療について教えて頂き、理解が深まりました。また、研修中に大学の教育施設を見学し、アメリカの医学教育について知る機会がありました。教育施設の見学では、学生は5人程の小グループで教育を受けること、講義室やコンピュータールーム、マネキンが置かれている部屋や問診、診察の練習できる部屋がいくつもあり、別室からビデオモニターで観察、指導を受けられることなど、大学として教育に非常に力を入れている事を感じました。内科見学中はチーフレジデントの方に、カルテの書き方を何回か指導して頂き、非常に有り難かったです。また、毎週一回、日本から見学に来ておられる他の先生方と一緒に英語の講義を受ける機会があり、プレゼンテーションの仕方、発音などを教えて頂きました。内科見学中は、レジデントのチームに入れて頂き、本当のカルテに書くのではなく、自分のノートにカルテと同じように書いていましたが、患者さんの状態を把握、整理すると同時に、アメリカ医療に触れるいい経験になりました。また、最後の一週間に家庭医療の外来も見学でき、その中で、老人ホームや訪問診療を見学できたのが良かったです。全体として、アメリカの医療を様々な側面から見られるように配慮された研修で、とてもよい経験になりました。
病院について
ハワイ大学附属病院というのは無く、クイーンズ病院、クアキニ病院などいくつかの病院があり、内科レジデント期間中、いろいろな施設をローテーションするようです。クアキニ病院では看護師さんへの指示、内服処方、注射、検査のオーダー、検査結果は全て、電子カルテになっていました。紙のカルテが別にあり、医師、看護師、コメデイカルの方は、同じカルテに記入していました。ICUではクアキニ病院は内科レジデントがICU担当医と一緒に担当し、重症肺炎、ショックや人工呼吸器をつける必要のある人は、例外なくICUに入室していました。入院日数が短いのに驚きました。数日で退院することが多く、日本の2倍以上のスピードで入退院していく印象でした。様々な職種の人がおられ、Social Workerも充実しており、退院時の様々なサポートをしてくれるようです。多くのコメデイカルの方がおられるのが、退院が早い一つの理由かと思います。医師もシフト制で夜中でも、担当医が人工呼吸器のウィーニングを進め、抜管しており、マンパワーを感じました。また、患者さんも、短期で退院することに対して、あまり抵抗はないように感じました。これについては医療費が高いことや文化の違いなのかなと感じました。肺癌の再発で、心嚢水貯留の患者さんに心嚢穿刺をICUで指導医が指導しながら、一年目のレジデントの方がされていましたが、学生も指導医の指導のもと、ICUで動脈ラインを取ったりしており、初めてでも、機会があれば、教えながら、どんどん実際にさせていく姿勢に驚きました。カルテはレジデント、学生の書く量は非常に多く、特に入院時はA4で2、3枚くらいは書いており、日本で私が書いていたカルテと比べるとかなり多いように感じました。また、レジデントの方の検査等に対するコスト意識が高いと感じました。日本にいる時はほとんどコストの事は考えたことが無く、様々な検査をオーダーしていた自分を反省しました。また、他科にも必要に応じてよくコンサルトをされていました。一度、癌専門医の方に、高齢の前立腺癌の転移の入院患者さんについて相談した時、前立腺癌の治療について解説して頂き、その知識の豊富さと頼めばすぐに教えて頂ける雰囲気に驚きました。患者さんも自分の癌ついて、普通に答えておられ、告知は当たり前で、治療法についても、自分で聞いて、決断している印象を感じました。また、高齢の患者さんも多く、家族の方もよく病室に来ていて、本人と一緒に医師の話を聞いて、皆で今後のことを相談していたのは日本と似ていると思いました。研修中、医師も看護師も親切な方が多く、聞けば丁寧に教えて頂けました。病気のこと以外にも患者さんと様々な話しが出来たのも良い思い出になりました。
内科レジデントについて
日本以外にも、フィリピン、タイ、インド等、様々な国からレジデントとして来ておられ、研修時間が週80時間以内に限られているからかもしれませんが、遅くまで病院に残る習慣はなく、むしろ朝が早く、仕事が早く終われば、早く帰るのは普通のように感じました。内科レジデントは3年間で各科をローテーションし、週に一度、外来を受け持ち、外来指導もあるようです。選択期間もあり、選択科に行くことも出来ます。クアキニ病院では内科レジデントは4つチームがあり、各チームは2年目か3年目のレジデント、1年目のレジデント、医学部3年生の3人が1組になり、診療にあたっていました。それぞれの入院患者さんに指導医がつき、レジデントと連絡をとっていましたが、患者さんの検査、薬の処方、患者さんへの説明、入退院時サマリーの電話での録音は大体、レジデントの方がされていました。また、学生に対する指導も時々、レジデントの方がされていて、皆で教えあうという意識が浸透している印象を受けました。普段は週に1日の休みがあり、その他にも、一年に4週間取れ、休みの日は病院から呼び出されることはないようです。普段は朝4時半頃から6時頃にきて、午後3時頃までにオンコールのチームに患者さんの申し送りをして業務は終わりました。オンコールの日は一年目のレジデントは晩8時か9時頃に帰り、翌日は夕方5時頃まで病院にいます。上級のレジデントはオンコール日は病院内に当直として残り、翌日の昼頃に帰ります。晩はオンコールのチームか、ナイトフロートという夕方7時頃からから翌日朝まで夜間担当のレジデントがいて、他のチームは担当患者さんの申し送りをして帰り、夜間に何かあればオンコールやナイトフロートが対処するので、休日や帰宅後に病院から呼ばれることはなく、オンオフがはっきりしていました。レジデントのチームは4日に一度、オンコール日があり、その日に入院の内科患者さんを全て担当します。ただし、1日の新規入院は5人までと限度が決められており、受け持ち入院患者さんも最高10人までと決められていました。カルテは皆さん、私が日本で書く量の数倍以上は書いておりました。入院の時はA4で2、3ページ記入し、さらに入退院時にサマリーを電話で録音する必要があり、タイプされ、カルテに戻ってきていました。レジデントの方と話たり、教えて頂いて、内科全般の知識が深く、広いことに圧倒されました。また、カンファレンスや講義が多く、モーニングレポートやICU ラウンドではレジデントの方が、症例のプレゼンテーションをしていましたが、皆さん、カルテを見ずにほぼ暗唱でプレゼンテーションされていました。ICUラウンドでは指導医からの質問もあり、レジデントや学生も積極的に答えていました。いろいろな面で評価され、手の抜けない厳しい研修でありますが、教育の機会が多く、またオンオフがはっきりしているのが印象的でした。
家庭医療外来について
クアキニ病院内に、多くの先生が開業されている建物があり、そこで最終週に外来を見学させて頂きました。朝の8時半から12時半頃までと午後2時から5時頃まで、一人15分から30分くらいかけて、診察、問診し、別の部屋で結果を説明されていました。患者さんは高齢の方が多い印象ですが、若い方や子供さんも診察に来ていました。一日で17人前後、外来患者さんが受診され、高血圧や高脂血症などの慢性疾患から、風邪や吐き気、急に膝が痛くなって来院された方もおられました。ノートパソコンを持ち歩いておられ、電子カルテになっており、採血と心電図、顕微鏡での検査、関節穿刺等は先生御自身でされていました。画像検査は院外の検査施設に依頼され、薬は院外薬局でした。また、木曜日には、先生と一緒に老人ホームを2施設、見学させて頂きました。1施設はクアキニ病院近くで、日本語を話される患者さんもおられました。雰囲気は日本の老人ホームにも似ており、毎日、催し物も多く予定されていました。ハワイでは生活費が高いため、共働き家庭が多く、なかなか家族が家で介護するのは難しいとのことでした。往診についてですが、基本的にはあまり往診患者さんはおられないとの事でした。たまたまクリニックを見学した週に一度、往診があり、先生の車で一緒に出かけました。見学時に往診した方は5ヶ月ぶりとのことで、頻繁には行かない様子でした。日本で往診をしているため、非常に興味がありましたが、雰囲気は似ている印象を受けました。
今回の研修を通じて、アメリカ医療に対する理解が深まったと共に、自分の将来を考える上で、非常に参考になりました。最近は、訴訟や保険の関係もあり、アメリカの病院を見学するのは難しいと聞いております。その中で、今回のエクスターンの機会を与えて頂いたことは、大変有り難く思います。研修中も、様々な人に助けて頂いたり、お忙しい中、説明して頂いたりして、非常に有意義な研修になりました。これも野口医学研究所の皆様やハワイ大学の皆様のお陰と大変感謝しております。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
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