この度、野口医学研究所の主催するトーマスジェファーソン大学での一週間のClinical Skills Programに参加する機会を与えていただきました。私はこれまでに、長期間の海外滞在経験・留学経験はなく、漠然としたアメリカ医療への興味から、このプログラムに半ば体当たりで応募させていただきました。渡航前は英語力や医学知識などに対し不安を抱いておりましたが、素晴らしい先生方や意欲溢れる参加者の皆様のおかげで、本当に充実した一週間を過ごすことができました。
一週間の実習では、Internal Medicineのinpatient round、Emergency Medicineの見学、Family MedicineとPediatricsのOutpatientsの見学、そしてとても立派なSkills and Simulation centerを見学させていただき、シミュレーターを用いて各種手技の実習や、聴診の講義を受けました。また、医学教育や医師―患者関係についてのお話などをしていただきました。
Internal Medicineでは1人ずつ各グループに振り分けられ、私はMCCU(Medical Cardiac Care Unit)を回りました。回診をしながら、先生方は互いに意見を出し合いながら質問をし合い、「全員が参加している」という印象を受けました。また、1人1人の患者さんにかける時間は私の大学病院よりもだいぶ長く、そして物理的にも精神的にも、患者さんとの距離が近いと感じました。学生のプレゼンテーションでは、先生が「Why?Why?」と何度も質問していた事が印象的でした。英語で奮闘している私に対して、先生が絵を描いてくださったり、iPodの英和辞典で翻訳してくださったりと、とても親切にしていただきました。
Emergencyでは多様な患者さんが搬送されてくる中、外傷患者さんが搬送されて来た際には場の空気が一変し、一斉に先生方が集合し、声を掛け合いながらprimary・secondary surveyを行っており、システムが構築されていると感じました。
Family Medicineでは、子供から妊婦まで多種多様な患者さんをゆっくりと時間をかけて診察しており、医師と患者の間のつながりの強さを感じました。4時間の中で10人の患者さんを診察しており、これは日本の病院と比べて圧倒的に少ないと思いました。「何か分からないことは?質問は?」と何度も患者さんに聞き、医師はメールアドレスを教え、「何か疑問があったら24時間ここに連絡してきていい」と話していました。日本の大学病院ではちょっと考えられない光景だなと感じ、後日先生に「メールアドレスなどprivateな情報を教えてもいいのですか?」と聞いたところ、患者さんがいつでも質問できるということで安心してもらえるし、結びつきを強くしてくれることだ、とのお答えをいただきました。
Pediatricsでは、Nurse practitionerの方に付きましたが、診察や投薬など医師と変わらない業務をしており驚きました。喘息の子供で、「もう一度この吸入をおこなってもwheezeがおさまらなかったら医師にコンサルトする」とのことで、看護師に任されている範囲の違いを感じました。
そんな充実した実習の中で、最も印象的だったのは、Majdan先生の聴診のレクチャーでした。シミュレーターのHarveyを使って、講義を受けながら実際に心音を聴くためとても分かりやすく、あっという間に時間が過ぎていました。日本にも聴診のシミュレーターはありますが、こんなにもわかりやすく説明を受けたことはなく、衝撃を受けました。金曜日には、Majdan先生の回診に付くことができました。診察をしながら私たちとインターンの先生方に対して丁寧に説明をしてくださった後、診察の最後には患者さんのベッドにそっと腰掛け、手を握り、会えてよかったとゆっくりとした口調でお礼を述べていらっしゃる姿が素敵で、理想としたい医師像でした。
トーマスジェファーソン大学では、「clinical」という言葉がとても重視されていました。Joseph Gonnella先生から、医師―患者関係についての講義を受けた際に、医師にはClinician・Patient Educator・Resource Managerの3つの役割があり、そしてこれらをKnowledge・Skills・Personal Qualitiesの三要素が規定していると教わりました。そして先生は、日本ではClinicianの Knowledgeが強く重視されているということを指摘されていました。確かに、日本では臨床知識に対しての多くの講義を受けますが、Personal Qualitiesと言うような要素は、個々人の「人柄」とされ、特に講義や評価を受けることはありません。Resource Managerの要素は、日本の医学教育の中では考えられていない要素かもしれません。先生がくださった、Improving Japan’s health care systemという文章でも、日本での無駄な投薬などが指摘されており、Resource managerという点は今後の日本医療において、学生の頃から学ぶべき事であると感じました。
先生はまた、「empathy」という言葉を繰り返されていたのですが、医師―患者関係において同情や哀れみのsympathyではなく、共感を示すempathyが必要だとおっしゃっていました。教育者側の方々が、このような考えを持って教育をされているということは、非常に大切なことだと感じました。
たった一週間でアメリカの医療の全てを理解する事はできませんが、この経験がアメリカ医療・文化への興味を大きく高めてくれたことは間違いありません。最終日に津田先生とお話させていただいた時、これから私たちにはたくさんの選択肢があるのだと実感し、これから、様々な選択肢の中から、悔いのない選択をしていきたいと改めて思いました。
野口医学研究所の先生方、スタッフの皆様、そしてMichael Kenney先生をはじめトーマスジェファーソン大学の方々、このような素晴らしい機会を本当にありがとうございました。
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