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アラムナイ活動及び研修レポート

TJUでの実習レポート

松岡伸英

はじめに
 今回、野口医学研究所のお世話によって米国フィラデルフィアのトーマスジェファーソン大学病院外科における3週間のエクスターン研修の機会をいただいた。今後同様の研修をされる先生方の一助となるよう、自分が研修を通じて見聞した事、考えた事などをここ記させていただこうと思う。
まず私の簡単な自己紹介をさせていただくと、卒後10年目の一般外科医であり、卒後7年目に臨床留学を志し、横須賀海軍病院などで留学準備を進め、今年の7月から幸運にもニューヨーク州の病院でMinimally Invasive Surgeryのフェローシップを行う機会を得ている。よって今回のエクスターンの目的として推薦状を書いてもらうという事はなく、フェローシップを始めるにあたって少しでも米国の外科医療に慣れておくという事が主であった。

 

トーマスジェファーソン大学病院外科について
 トーマスジェファーソン大学病院はフィラデルフィア市街にある総合病院であり、メディカルスクールを含めて約10棟程度の大きなビル群がキャンパスを形成している。ベッド数は約800床とのことであったが、日本と比べて入院患者の回転が早いため、実際の規模としては日本の病院の1200床クラスかそれ以上に匹敵するのではないかと思われた。手術室は全部で約50室であった。
 外科はgross team(一般、膵臓)、green team(一般、消化管)、colorectal team、bariatric team、breast team、endocrine & plastic team、transplant team、 trauma team、thoracic team等に分かれており、アテンディング外科医は約50人、それに加えて外科レジデントがgeneral surgeryだけで各学年6人ずつ計30人という陣容であった。外科トップのDr. Yeoは膵手術で有名であり、膵頭十二指腸切除術だけで年間150例を数えるとの事である。私はこのうちgreen teamのDr. Rosatoのもとに配属され、green teamの手術の他、gross team, colorectal team, bariatric teamなどの手術を見学した。

 

レジデント達の1日
 私の研修は基本的にgreen teamのチーフレジデント(5年目レジデント)であるDr. Rittenhouseをシャドウイングするものであった。green surgeryには常時30-40人の入院患者がおり、それらの患者をインターン(1年目レジデント)3人(うち2人は他科からのローテーション)、2年目レジデント1人、4年目レジデント1人、チーフレジデント1人、及び学生1-3人がチームとなり分担していた。レジデントと学生達は毎朝4時半から患者の回診を始める。夜間帯のデータを収集し、カルテを記載して指示を出した後、6時に上記のメンバーが集合してカンファレンスが始まる。カンファレンスでは約1時間で30-40-人の経過報告とアセスメントが各担当医からプレゼンされ、チーフレジデントの指導が入りプランが決定されていった。カンファレンス終了後は手術である。1例目の患者は7時には手術室に入室しており、早ければ7時半頃から手術が始まった。各レジデントが1日数例の手術に入り、日によるが大体16-17時ぐらいに手術は終了する。夕方にもう一度朝と同じカンファレンスを行い、その後各自受け持ち患者を回診したりして大体20-21時頃に帰宅している様子であった。1日の労働時間は16時間程度であろうか。週末もレジデント達はほとんど病院に来ている様子であったが、月に1回程度土日を完全に休める機会があるとのことであった。
水曜は主に外来であるが、レジデント達は自分の外来を持つ事はない。アテンディングの外来患者の問診をとり、アテンディングにプレゼンをした後、一緒に患者を診るという形式だった。その他、毎週火曜に各チームが経験した興味深い症例を文献的考察を交え発表するGIカンファレンスが、毎週木曜に合併症発症例や死亡症例を討論するM&Mカンファレンスが、各科アテンディングが参加のもと行われていた。ちなみにレジデントとアテンディングが接する機会、すなわち私がアテンディングと接する機会は基本的に手術、外来とこれらのカンファレンスの時のみであった。
 基本的にレジデント達はレジデント達だけで行動しており、それを監督するチーフレジデントがアテンディングと連絡をとるという感じであり、低学年レジデントがアテンディングと接する機会は比較的少なそうであった。低学年レジデントは自分より高学年のレジデントから指導を受け、高学年レジデントは低学年のレジデントに指導するというまさしく屋根瓦式の教育が行われていた。

 

手術について
 エクスターンである私は手洗いを許されず見学のみであったが、手洗いをしない事で手術室を行き来して同時に複数の手術を見学したり、興味のある部分だけを見学することが出来たので、手洗いをして見学するよりもかえって良かったかもしれない。3週間の期間に入った手術は主に次のようなものである。腹腔鏡下結腸切除5例、開腹Miles手術1例、開腹膵頭十二指腸切除3例、開腹膵体尾部切除2例、ロボット支援腹腔鏡下膵体尾部切除術1例、ロボット支援腹腔鏡下胆嚢摘出術3例、腹腔鏡下胆嚢摘出術2例、開腹総胆管結石切石術1例、腹腔鏡胸腔鏡下食道切除胃管再建術2例、鼠径ヘルニア手術5?6例、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術1例、腹腔鏡下脾臓摘出術1例。
 日本の手術との違いは思っていたほど無かったが、ロボット(ダヴィンチ)を多く取り入れている点は目を引いた。トーマスジェファーソンだけで最新式の3世代目ダヴィンチが3台あるとの事であった。また、腹腔鏡手術は日本では少なくとも3人で行う事が多いのに対し基本的に2人だけで行っており、助手は片手でカメラ、片手で鉗子を操作していた。このためかフレキシブルカメラを使わず、全て斜視鏡を使用していた。その他、結腸のリンパ節郭清は日本でいう2群郭清のみであり、リンパ節郭清に関しては日本の方が相当丁寧だと思った。吻合はほぼ全て器械吻合であったが、これは最近の日本の多くの病院でもそうであろう。開腹手術ではリガシュアーやハーモニックなどを使わず結紮を多用しており、理由を尋ねるとレジデントに結紮をさせる為だとのことであり、素晴らしい事だと思った。

 

研修内容について
 前述の通り基本的にチーフレジデントをシャドウイングする形式であった。電子カルテにアクセスする事が許されていないので、患者の情報を得るのに苦労した。レジデント達は患者の情報の一覧を電子カルテからプリントアウトしたものを常に持ち歩いており、カンファレンスなどもそれを見ながら進められるのだが、私にもその一覧をもらえる様にチーフレジデントに頼んでみたが、そういう事はしないよう上から言われているのか結局もらう事はできなかった。カンファレンスでは1時間弱の時間に30-40人の患者を議論するので英語が非常に速く、研修最初の方は患者の情報も無いためカンファレンスの内容をほとんど聞き取ることが出来なかった。カンファレンスでも回診でも外科は常にスピード重視であり、その中で内容を理解し良い質問をすることはかなりの英語力が必要と思われた。特定の患者を担当する事も出来なかったが、一度だけ学生の好意で朝の経過報告を代わりにさせてもらう事ができた。その際はみんな”Excellent!”などと褒めてくれたが、嬉しかった半面、たったそれだけの事で大げさに褒められることが自分が単なるお客さんの証明である様に思えて微妙であった。外来では自分もレジデントや学生と同じ様に患者を問診する事は出来ないかアテンディングに尋ねてみたが、オブザーバーシップの立場でそれは難しいとの返事だった。多くの制約がある研修環境ではあったが、アテンディング、レジデント、学生達は皆フレンドリーで、質問には丁寧に答えてくれたし、米国の手術や医師養成システム、エビデンスに基づいた医療を直に体験出来たのは得難い素晴らしい経験であり、多くの事を学ぶ事ができたと思う。

 

さいごに
 今回の研修では渡米前から現地まで野口関係の方々に大変お世話になった。研修前に色々調整いただいた医学交流担当者の方々、キャンパスや市街地の案内をはじめ寮生活のきめ細かい所までお世話いただいたラディさん、2度も楽しい夕食にご招待いただき色々ためになる話を聞かせていただいたMike Kenneyさん、回診にご一緒させていただき食事もご馳走になった佐藤先生、その他多くの方に支えていただき今回のエクスターンを全うする事が出来た。この場を借りて厚くお礼を申し上げたい。今後私はアメリカで外科系フェローシップを幾つか経験した後に帰国し、日本の医療に何らかの形で貢献したいと考えているが、このエクスターン研修で得た経験や知識を今後も最大限生かしていきたいと思う。

 

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