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アラムナイ活動及び研修レポート

TJUでの実習レポート

竹原 朋宏

 今回私は米国トーマスジェファーソン大病院にて、1週間病院実習をして参りました。トーマスジェファーソン大学はかつて全米ランキングで1位にも輝いた全米屈指の歴史ある大学で、フィラデルフィアの地域の住民からの信頼は厚く、臨床に重きを置いた大学です。本プログラムに志願した理由としましては、卒後米国に留学する目標があり実際の現場での医療に接することで、米国で医師に求められている力を知りたかったこと、日本での病院実習に目的意識を持って望みたかったことが挙げられます。短期間ではありましたが、プログラムは大変濃厚で、実際の自分の体験に勝るものはないと感じました。以下私が学んでまいりましたことを記させていただきます。

プログラム開始前のWelcome Partyでは浅野先生、津田先生と会食する機会に恵まれました。津田先生には渡米のきっかけ、日本の医療に欠けているもの、医者の家庭の持ち方など様々な本音を聞かせていただきました。そして若者には無限の可能性があるので恐れることなくなんでもチャレンジすることを期待していただきました。

内科の実習は、まず8時からattending, resident, medical students, nurse, case managerからなるカンファレンスから始まりました。レジデントが患者さんの病状をものすごいスピードで報告し、attendingやco-workersから様々なフィードバックがなされていました。米国ではひとつの医療チームで患者さんの治療を行うというシステムが徹底されており、皆が患者さんの情報について共有しているため非常に効率のよい医療がなされていると感じました。またcase managerという日本にはない症例専門のスタッフが置かれていて症例報告の潤滑さに貢献していました。9時からはattending, resident, medical studentsによる小グループでさらに患者さんの今後の治療方針についてつめていきます。医学生は1人あたり4人の患者さんの管理を任されており、実際に病室に行って問診を行っていました。日本でいえば5,6年生にあたりますが責任、やりがいに大きな差が見られました。

小児科では担当の先生について午後で6,7人の患者さんの問診の様子を見学しました。どの科でもいえることですが、日本とは診察室のつくりが根本的に違っていました。日本では医師がひとつの部屋に居座って、患者さんが医師の下へ診察されに行くスタイルです。対して米国では処方箋を印刷したり、患者さんの割り当てを調べたりする医師ルームにまとまって医師は控えており、患者さんの待つ個室に診察しに行くスタイルです。日本のようなカーテンではなく、ひとつの個室なので患者さんのプライバシーがとても大切にされていると感じました。小児科医は患者である子供だけでなく親に対するコミュニケーションが非常に丁寧に行っているのが印象的でした。

ERでは女性の腹痛、交通事故による頸部外傷、スポーツ外傷、急性薬物中毒といったさまざまな疾患を臨場感あふれて見ることができました。ホームレスが道端で倒れていて運ばれてくることも多く、そのような保険に加入していない患者さんの診察費用はどのようにするのか尋ねたところ、病院が支払いを行うので問題ない、との答えが返ってきました。お金を有するものに対しては最高の医療を提供する、というわかりやすくも開き直った感じもするアメリカ医療の現実を目の当たりにしました。また点滴の管理などは看護師に一任しており、自分の決められた仕事以外は他職種の領域に関与しない方針でした。

Family medicineは日本では身近に接する機会が少なく、日本が立ち遅れている分野のひとつです。子宮頸がんの定期検診、小児の予防接種、アフリカ渡航予定者に対するワクチン接種、1型糖尿病患者の生活管理など人々の健康な日常生活に根ざした医療と感じました。診察時間は30分と十分にとられており患者さんも病気以外のプライベートな会話をするゆとりも見られました。

Majdan先生には心音ロボット‘Harvey’を使った聴診器の講義とsimulation centerの人形を使った身体検査の取り方を教わりました。トーマスジェファーソン大学の有するsimulation centerは全米最大で、実際の臨床現場をいかにリアルに再現するかにこだわったさまざまな機器が備わっていました。またMajdan先生の聴診法の講義は明快で、循環器のロジカルが楽しめました。先生には病院内で実際の回診の様子も見せていただきました。患者さんの目線にあわせ、手をとりながら、常に患者さんの言葉を優しく引き出していくその姿は、まさに臨床医の目指す理想のように感じました。

最終日にはアメリカの医学生の行うOsce実習を実際に模擬患者さん相手に体験しました。別室でモニタリング、録画されている上に、実習後には模擬患者さん自身からFeedbackをもらえて大変参考になりました。ジェファーソンの先生が口をそろえて強調してらしたのは、診察においてもっとも大切にすべきは検査結果でも現在の所見でもなく、患者さんの訴える病状に至ったhistoryであるということでした。そして患者さんは聞かれないことは自分からは語らないこと、医師は予想していないことは聞けないということ、よって患者からの情報の引き出し方にこそ医師の力量が問われることがわかりました。

全体を振り返って感じることとしましては、アメリカの医療は教育、診察どの点をとっても効率がとても重視されており、また医師自身が自分の人生のQOLを唱えることは、怠けでもなんでもなく一人の人間としての当然の権利として社会で認められていました。国ごとに医療システムが異なり、どれが最善のものかはわかりませんが様々な医療に触れ自分の中での理想とする医師像に近づくように柔軟性を持って学んでいきたいです。また英語に関しては言葉の壁で対等に立てなくて、本当に悔しい思いをしたので今後のいい起爆剤になりました。ジェファーソンでのすばらしい体験を今後の学生生活に生かしていきたいです。

最後になりましたが、このような素晴らしい機会を提供してくださった浅野先生、佐藤先生、津田先生をはじめとする野口医学研究所の先生、スタッフの方々、プログラムのorganizerであるMichael氏、Pohl先生をはじめとするジェファーソンの先生方に厚く御礼申し上げます。

津田武先生からのコメント

 

 

TJUでの医学教育の現場を実際に体験できて、非常に有意義な研修であったことが察せられます。特に診断学における病歴聴取History takingの大切さに気がついたのは、大きな発見ではなかったかと思います。日本の臨床の中でその重要さの割りに最も軽視されているのが、まさに「病歴」だと思います。患者にどのような質問をして、どのような情報を集めるのかは、まさに医学におけるArtであり、その医師の病態生理の理解の深さに基づくものです。本当に優れた医師は、病歴だけで大体の診断までたどり着きます。日本でこの重要さがあまり強く認識されていないのは、非常に残念です。新学期から始まる日本での病院実習、頑張って下さい。病院実習の際、病歴と身体所見を大切にして下さい。貴君の今後の成長を楽しみにしています。
津田 武

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