財団創設25周年という節目を迎え、野口医学研究所に大変お世話になった一人として、厚く御礼を申し上げるとともに、後輩へのメッセージとして、今回寄稿させていただくことができ大変光栄に存じます。
#留学の経緯 “目標を定め決してあきらめない”
医学部5年次、大学の恩師の紹介で、豪州のモナーシュメディカルセンターの新生児集中治療室(NICU)に1ヶ月留学する機会を得ました。高校時より漠然と留学に憧れを持っていたこともあったので、1ヶ月間は大変刺激的な毎日でした。語学力には正直自信がなかったのですが、世界各国の人々と交流を持ったことで、国際共通語としての英語の必要性、重要性に気づかされると同時に、今後、海外で過ごしてみたいという気持ちになりました。
米国は臨床医学教育が進んでいると聞いていたので、米国での臨床研修を希望し、在学6年次、米国医師国家試験にあたるUSMLEを受験し、合格することができました。
卒後は、米国研修を視野にいれ、沖縄県立中部病院で2年間初期研修、その後1年間、在沖縄米国海軍病院でインターンを行い、卒後4年目でハワイ大学内科レジデンシー(研修)プログラムに入るプランを立てました。
#留学の道を広げる 〜野口医学研究所との関わり〜
卒後米国留学を目標に沖縄県立中部病院で研修を行っていましたが、東京にて毎年行なわれる、野口医学研究所のセミナーに以下の3つの理由で参加していました。
1.米国臨床留学・医療情報収集
2.自分の意欲と目標の維持
3.同じ目標を持った先生方との交友関係を深める
野口医学研究所による米国臨床短期研修は、当時からハワイ大学、トーマスジェファーソン大学等で行っており、短期(1ヶ月)および、良い評価をもらい希望すれば中期(3ヶ月)研修などがありました。CSA(現在のStep 2 CS)準備のために短期研修を行う先生もおられたが、ハワイ大学内科では、ECFMG Certificateを持っているか、あるいは、それに近い状態(USMLEはStep1&2CK共に合格しStep2CSがまだ通ってないが受験予定)であれば、1ヶ月の短期研修中にほとんどの研修生が翌年のレジデント選考のための面接を受けることが可能なようである。もちろん短期研修の評価、USMLEの点数、推薦状、履歴書(CV)、personal statementを十分評価した上であるが、今までに多くの日本人の先生方が、正規のマッチングを通さずにポジションを獲得している。また、米国医学部卒業者でも難関な外科でもハワイ大で採用された先生が何人かいらっしゃるので、外科志望の先生方は、この短期研修を外科で行い、チャンスがあれば面接を、という可能性があるのではないか。
特に内科臨床留学志望の先生は、是非ECFMG Certificateを取得してから、またはそれに近い状態でハワイ大学での内科短期研修に臨んでいただきたい。私は、海軍病院の選択ローテーション中、ハワイ大学内科で4週間この短期研修をおこなった。研修での目標は、以下であった。
1.ハワイ大学内科レジデンシープログラムの評価、全米の各プログラムとの比較
2.ハワイ大学内科臨床研修プログラムのポジション獲得
3.米国臨床研修開始のための準備〔語学を含めシステムになれる〕
この4週間の研修中、面接を行いエクストラマッチポジションを得ることが出来ました。
#ハワイでの内科レジデンシー3年間 〜金太郎飴教育〜
米国の初期研修では、1年目は医学生を、2〜3年目は1年目研修医を、そして指導医が全体を指導するという“屋根瓦式教育”が徹底され、一定の臨床能力を身に着ける医師を育てる組織がしっかりと出来上がっています。例えば、どこの病院でも、どの医師に治療を受けても標準的な治療が行われる、いわば“金太郎飴”のような教育方法です。症例検討会や、講義なども教育プログラムとして毎日組まれており、レジデントは全員、これらの教育機会に出席する義務が課せられています。日本で見受けられる、教授回診のために教育講義を欠席するというようなことは決してありません。その症例検討会ですが、まず驚いたのが、米国研修医の症例プレゼンテーション能力の高さです。はじめは圧倒されたのですが、一定の法則を習得し、経験を積んだことで1年目終了時には周りと同様にプレゼンができるようになり、ベストインターン賞を頂くこともできました。
また、ハワイ大学で特筆すべき教育方法は、Problem Based Learning(PBL)教育です。これは、医学部教育から盛んに行われており、レジデンシーにおいても実践され、症例検討会では、参加しているレジデント、医学生が積極的に発言し最高の教育機会になっています。
さらに、米国の初期研修プログラムでは大体、研修期間中に何らかの研究プロジェクトを終了させ、学会などで発表することが義務付けられています。ハワイ大学では、指導医やChief Residentが非常に協力的です。レジデンシー3年間でアメリカ内科学会ハワイ支部でのポスター症例報告を数回、日系2世のCohort研究であるHonolulu Heart Programのデータを利用しての研究、ハワイ大学の教育担当者と老人医学教育に関する共同研究を行うことができ、フェローシップポジション獲得に生かすこともできました。
#内科研修後のリウマチ科フェローシップ
米国には約100のリウマチ科フェローシッププログラムがあり、通常2年のプログラムです。基礎研究を主体に行うResearch Trackも存在し、その場合3年間となります。疾患修飾(性)抗リウマチ薬、生物学的製剤(Infliximab, Etanerceptなど)などの研究進歩・開発により、以前はステロイド漬けであった関節リウマチ(RA)などのリウマチ疾患に対する治療薬の範囲が広がりました。そして、これまで以上にリウマチ科に対する深い知識と経験が必要になり、リウマチ科専門医の需要が増えたのと平行してフェローシップの応募者も増え、狭き門となってきました。
実際の研修内容ですが、フェローシップ1年目は、臨床が中心、2年目は研究が中心となり、臨床教育は、外来、院内コンサルト、教育レクチャーの3本柱からなります。
まず外来教育では、週一回の継続外来であるLupusクリニック(SLE患者を中心に診療)とArthritisクリニック(RA患者を中心に診療)を2年間通じて担当。さらに1年目フェローは、在郷軍人病院で週一回半日のクリニック(高齢者を中心に痛風、骨関節症、その他のCommon Diseasesをみる)の担当、その他、週一回半日は、超専門外来として小児のリウマチクリニック、骨粗鬆症クリニック、眼科と合同に診察を行うUveitisクリニック、皮膚科と合同に診察する乾癬クリニック、Connective Tissue Diseases Dermatologyクリニックのいずれかに参加します。
院内コンサルトは、1年次は休暇と選択期間以外の10ヶ月間、2年次は1ヶ月間のみ行います。1月ごとに4つの病院をローテーションし、主治医としてではなくコンサルタントとしてチーム医療に加わります。
さらに教育プログラムとして、サマーレクチャーコース、Journal Club、Grand Rounds、Immunology Reading Club、その他のカンファレンスへの出席が2年間を通して義務付けられており、最高の教育機会となりました。 また、2年次に行う研究のテーマは1年目の途中に選択しますが、私は、The Consortium for Rheumatology Researchers of North America (CORRONA)が行うRAのCohort研究のフェローとして、全米のリウマチ科フェローから3人に選出され、フェローシップ期間中の臨床研究として、特にCohort研究を行いました。
#グローバルスタンダードが求められている医学界、米国臨床経験は最高の人生の宝
ハワイでは、美しい海に囲まれ、ワイキキビーチでの散歩、ドライブという最高の贅沢がありましたが、フェローシップでニューヨークに移りかなり生活も変わりました。交差点ではTaxiがいつもホーンを鳴らし、人々は周りを見向きもせず、まっすぐ先を見て早歩き。そんな中、妻と、3歳になる息子とともに生活をエンジョイ?とは決していえなかったですが、ニューヨークで過ごせるのも人生のなかで貴重な経験と思い、力を揃え頑張りました。休日にはセントラルパークを散策、5番街の“Window”ショッピングを楽しみ、数回ですが、Jazz、Musicalなどに行く機会もあり、ハワイとはまったく違ったアメリカの生活も体験できました。
#今後に向けて
フェローシップ終了後日本に帰国し早くも2年が経過しました。亀田総合病院にてリウマチ科フェローシップ(後期研修プログラム)を立ち上げ、今までの経験を後輩に伝え、Role Modelになれるよう精一杯努力しております。
米国は努力と情熱を持っているものを必ず認めてくれます。自分の可能性を信じて、決して夢を捨てず、絶えず挑戦し続け、数年先の目標を定め、その夢を実現されるよう心から祈念しています。そしてこのメッセージがみなさんの挑戦に少しでも参考になればと思っています。
【著書】
●「アメリカ臨床留学大作戦」 羊土社
●「米国式 症例プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法
〜病歴・身体所見の取り方から診療録の記載,症例呈示までの実践テクニック〜」羊土社
●「外来診療コミュニケーションが劇的に上手くなる方法」羊土社
●ワシントンマニュアル・リウマチ科コンサルト(翻訳) メディカル・サイエンス・インターナショナル
●ワシントンマニュアル・総合内科コンサルト(副監訳・翻訳) メディカル・サイエンス・インターナショナル
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