米国財団法人 野口医科学研究所

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留学体験記
 私のアメリカ臨床留学体験記
                                               アイオワ大学 外科
                                                 助教授 星 寿和

野口医学研究所25周年おめでとうございます。


私が野口医学研究所と出会ったのは今から18年前になります。当時、私は医学部の6回生でペンシルバニア大学にてエクスターンシップをさせていただいたのが初めての出会いでした。津田先生も当時フィラデルフィア小児病院にてレジデントをしておられ、幡生先生はリサーチにてペンシルバニア大学におられた時ですから、まだ野口の黎明期であったのではないかと思われます。その後、私は医大を卒業し、大学の外科よりミシガン大学の外科にリサーチフェローとして留学をさせていただきました。ミシガンでは3ヶ月にわたる外科の臨床研修と9ヶ月の膵外分泌細胞の増殖能に関する研究をさせていただき大変充実した留学経験となり、この留学体験が私のその後の進路に大きな影響を与えました。ミシガン大学の外科はアメリカでもトップクラスの外科であり、多くの著名な医師がスタッフとして在籍しており、米国における臨床の奥深さをまざまざと見せつけられたように記憶しています。留学より戻り日本で外科の研修をする傍ら、アメリカで外科のレジデントをしたい、系統的な教育を受けてみたいと強く思うようになり、1994年に野口のエクスターンシップに応募しフィラデルフィアのトーマスジェファーソン大学外科に3ヶ月臨床研修をさせて頂くという幸運に恵まれました。その際、佐藤先生にお会いし外科のレジデンシーに入るために様々な援助、助言を頂いたのを昨日のことのように覚えています。このエクスターンシップがきっかけとなり、幸運にも外科プレリミナリーのレジデントとして採用して頂きました。2年間のジェファーソン大学でのレジデントの後その関連病院であるマーシーメディカルセンターにてさらに3年間の外科の研修を行い、一般外科のトレーニングを終え、無事に外科専門医の資格を得ることが出来ました。レジデント後半に以前より興味のあった腫瘍外科のフェローシップを行う為マッチングに乗り、ロスウェルパーク癌センターでの2年間の臨床フェローとしての研修が決まりました。ロスウェルの2年間では脳外科、婦人科、泌尿器科以外の全ての部位の腫瘍について外科的な知識、技術を教えられました。またmultidisciplinary approachにより外科的治療だけではなく、化学療法、放射線治療の最新の知見を知り、患者さんのバックグランドを考えた治療をする姿勢を学びました。これらの知識、経験、物の考え方は日本に帰ってきてからの臨床の現場での判断に大きな影響を与えました。


この留学経験中、常に感じてきたことは、アメリカのゴールを設定しそのゴールに向かってひたすら前進をしていくという特有の姿勢でした。それは医療の現場でもしかり、医者のキャリアという点でもそうでした。私はアメリカンフットボールが好きでよくテレビで見ていたのですが、あのスポーツにはアメリカの典型的な姿勢、つまり各々の人が割り当てられた仕事を専門科として責任を持って果たすことにより一つの大きなゴールをみんなで目指すという姿勢が如実に表れていると思います。ゴールを達成する為に今何をすべきか?そう常に考え行動していくそんな姿勢をこの留学中に見せつけられたように感じました。


日本での現在の医師不足は、医師の数だけでなく、独り立ちして安全に診療ができる医師も不足していることからきているようにも思われます。卒前、卒後教育の重要性はようやく認識されてきてはいますが、暗中模索といってもいいほど整ってはいません。これからの日本の医療は医学教育の改革によって大きく左右されていくのではないかと私は思っています。医学教育を良い方に改革して行くためには、やはり良い教育を受けた教育に関心がある医師が増えることが必要条件です。そのために野口医学研究所の、そしてそのアラムナイの日本の医療改革に担う役割というのは次第に大きくなって行くと思われます。

私は現在米国のアイオワ大学にて腫瘍外科のアテンディングとして仕事をしています。臨床と、医学生、レジデントの教育、臨床研究と忙しい毎日ですが、自分の学んだことを生かしてゆける職場であり、かつレジデントを教え、彼らに何らかの影響を与えることができることに喜びを感じています。将来、何らかの形で、このようなことが日本でできることを希望し、また野口医学研究所が、その中心となっていくのではないかと期待しています。


これから留学しようとしている人へ

アメリカでの留学の醍醐味はやはり臨床留学にあると私は思っています。その理由はいくつかあるのですが、幅広い系統だった知識、圧倒的な患者数そして研修終了時に独り立ちして診療を行えるようになる教育はやはり日本では得難いものがあります。これから留学したいと思っておられる方にはやはり留学のゴールをはっきりさせた上で留学されることをお勧めします。留学、 特に臨床留学は人種の壁、言葉の壁も厚く“何としてでもあそこまで行きたい”という熱意がないと途中で挫折してしまう可能性があります。自分の目標、将来のゴールをしっかり考えた上で留学されるのが良いと思います。アメリカへの臨床留学は非常に難しいと言われ続けていますが、それは不可能という意味ではありません。日本という国は遣唐使に始まり遠い昔から、命をかけてまで異国に学びに行った人々によって、新しい文化を取り入れてきた国であると言っても過言ではないと思います。

現代に於いては命をかけるというのは無いでしょうが、やはり異国で学ぶと言うことはそれぐらいの厳しさと責任があるのだということを自覚して頂きたいと思います。その上でこれからの日本の医学界をリードしていく人が育ってきてほしいと希望しています。


最後に

私にとって野口との出会いは医師としてのその後の方向性を全く変えてしまうほどのものでした。野口医学研究所の援助がなければ研修を無事に終えることはとうてい出来なかったと思い、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これから先、私に続く人たちに何らかの形で、この経験から学んだものを伝えてゆくことが私の使命であり、貴研究所への御恩返しであると思っております。