米国財団法人 野口医科学研究所

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寄稿
 野日米医学交流の意義と展望
                                              サクラ精機株式会社
                                                学術顧問 青木 眞

日米医学交流の意義を改めて指摘、強調する時代ではない。もし依然としてその重要性、意義を強調する必要があるとすれば本当に我々を取り囲む病理は深い。本当の交流の無いところから本当の情報交換は生まれず、我が国の医学教育・医療事情は地球上の孤島のように漂流し続けるだろう。本当の交流はInternet情報をいくら渉猟しても得られるものではなく、やはりFace to faceの皮膚温を伴う、時には激しい議論さえ伴う生身の経験からのみ得られる。


最近の若手医師との交流で顕著に感ずる事は、Internetなどから得られたと思われる、驚くほど豊かな医学的な最新知識と共存する、時に繊細・脆弱な対人関係、対組織関係に関する感性である。これには色々な背景・原因があるだろうし、それを検討する素養も興味も筆者は持ち合わせない。ただし、これでは日本国外に一歩でれば、いくら頭一杯の教科書的医学知識を持ち合わせていても、海外の、特に米国の医療現場で働く事は難しいのではないかと思われる。もちろん「自分は日本に生まれ、日本で医師として生きていくのだから問題無い」とする若手もきっといるだろう。しかし本当は、日本にだけ居ても本質的な問題は残るのである。


米国に臨床留学すると、大気にガソリンの匂いが混じる空港に降り立った瞬間から一人の日本人としてのIdentityと孤独を感じる。基本的には自分を守る仲間も組織も無い、今何が出来るかだけを問われている一人の自分があるだけである。この経験が人生で極めて重要である。日本に居れば、日々のRoutineのゆりかごの中に、あなたを養い守る組織があった。しかし、米国では、今、何が出来るかのみを問われる。緊張を強いられ、しんどい事である。

しかし、実はこれが極めて素晴らしい事である。なぜなら、自分の今を問われる事は、ある意味、自分の過去は一切不問にするという事に近いからである。米国は思い出したくもない我々の様々な過去に、そもそも興味が無いのである。


この強烈な、今指向、自分指向は恐ろしいほどのマイナスを米国に誕生させたが、同時に世界最大・最強の頭脳を常にAttractし花開かせていったのである。我が国や欧州の多くの国が少子化問題に悩むのを尻目に、米国の人口は筆者が研修医だった1980年代2億人だったのが現在は3億人になっている事実がこの国の魅力を雄弁に物語っている。


司馬遼太郎がエッセイで見事に指摘したとおり、正確には米国は国(Nation)ではなく、体育館・運動場のような空間(Country)である。そこで全く異なる文化、Backgroundを持つ人々と生活し、仕事をするという経験は医術の修行のみならず、自分の人生を、そして母国日本を国として見直す機会になる事は間違いない。


最後に25年間、多くの困難を乗り越え、多数の若き医師を米国に送り、その優れた臨床医学の導入に力を尽くされた米国財団法人・野口医学研究所の方々に心からの敬意を表します。