米国財団法人 野口医科学研究所

サイトマップ

お問い合わせ

HOME

 
設立趣旨 あゆみ 組織概要 臨床留学プログラム アラムナイ活動及び研修レポート セミナーのご案内 野口ニュース
 

TOP  財団設立20周年記念誌

留学体験記
 アメリカ臨床留学をめざして
                                      東北大学医学部附属病院 老年呼吸器内科
                                        丹治 治子

わたしは2001年に野口医学研究所の短期研修制度に応募し、幸運にも研修生に選ばれ、ハワイ大学の短期研修に一ヶ月参加することができました。その後、CSAを受験しましたが一度目は不合格。もう一度英会話及び英語での問診等を勉強しなおし、翌年にカプランのCSA5日間コースを受けた後再度CSA受験しやっと合格しました。
その後USMLE Step3を今年夏に受験し、なんとか合格できたので、来年度の申し込みをめざし、現在インタビューにむけてまた英会話の特訓中です。というわけで、まだアメリカへの臨床留学は実現していません。ですが、最初にUSMLE Step2を受けてから約7年と長い時間をかけ、その間に結婚、出産などもあり、子育てをしながら、全く留学経験もなく、米軍病院での勤務経験もないわたしが、どのように短期留学し、試験を受けてきたのかということも、同じような境遇の方には参考になるかと思い、書いてみようと思います。


わたしは1993年長崎大学を卒業しました。とにかくいろんな患者さんがみられるようになりたかったので、研修先としてローテーションのできる一般病院を選びました。このときは臨床留学のことは全く考えていませんでした。ただ研修中いろいろな科をまわったのですが、内科以外の科での研修期間は短く、また産婦人科、精神科、整形などは全くまわらなかったので、少し他科への欲求不満が残りました。3年が終るころ、その後の進路を考えるとき、臨床留学について少し考えるようになりました。それは、臨床留学を経験している素晴らしい先生方にお会いし、指導をうけられたこと、また外国からの患者さんとのコミュニケーションがうまくとれず非常にくやしい思いをし、英語の話せる後輩が楽々と同じ患者さんとコミュニケーションをとるのをみてとてもうらやましかったことが、きっかけになりました。
その後、総合診療科で働きながら、USMLEの勉強をし、Step2はなんとか合格。その後Step1も受けましたが、これは一度目は不合格でした。卒業して何年もたっているので臨床のほうはなんとかなっても基礎は生半可の勉強では無理だなと思いました。そのころ結婚、妊娠ということが私生活ではあり、産休というものを初めてとりました。これが、これまでずっと働いてきた人間にとっては不思議なもので、何もすることがないのだけれども、あまり身体を動かすこともできないという状況です。そこでこれはもう勉強するしかないと思って、受験生のように基礎を勉強しました。そして出産後、Step1にもぎりぎり合格。これは産休のおかげだったと思います。
ところでわたしは大学のころ少し英会話学校に通ったくらいで、英語は全然話せませんでした。USMLEはとにかく読めればほとんど専門用語なのでなんとかなったのですが、TOEFLのほうがわたしにとっては難関でした。USMLEと一緒にEnglish Testも一度受けたのですがこれも落ちました。それでTOEFLでなんとか550点をめざしてがんばったのですがなかなか点数があがりませんでした。とくにリスニングは、問題集などいろいろ買いましたが伸びず、とうとうCSA導入が始まってしまいました。CSA導入前にTOEFLで550点とれていれば、CSAは受けなくてもCertificateがもらえたのに、結局わたしは間に合わず、CSAを受けないといけなくなってしまったのです。CSA導入ぎりぎりで受けたTOEFLでも547点だったときは、「あーこれでECFMG CertificateをもらうためにはCSAを受けないといけない・・・」とがっかりしました。わたしのように留学経験や米軍病院での勤務経験がないものにとってCSAというのは超困難な試験に思われました。しかしこの頃には、臨床留学したいという気持ちもとても強くなっていました。子供を2人育てつつ働いていると、独身のときとは違っていろいろと制約があり、もっと働きたいという気持ちが消化不良になりそうなのを、いつか絶対いくぞーという気持ちをばねにしてやり過ごしている感じでした。

その後なんとかTOEFLで550点の壁を突破し、いろいろ情報収集を始め、野口医学研究所の短期研修という制度を知りました。アメリカの病院で患者さんを実際にみることができてその上CSAの模擬試験のようなこともできるというのをみて、これだっと思って応募しました。研究所のセミナーは2回参加しましたが、どちらも実際にアメリカで研修された先生方のお話があり、とても興味深いものでした。2回目のセミナーの翌日が短期研修のための選考会でした。ところが、選考会当日、手違いで時間変更の連絡を受けていなかったことから遅刻というかたちになってしまい、私が遅れて入っていった後、担当されていた先生が「アメリカでは時間にルーズな人間は相手にされない」というようなことを言われたときには、これはもうだめかもしれないと思いました。しかしこんなことで誤解されてはいけないと思い直し、面接のときに、時間変更の指示が全員に伝わっていなかったこと、自分がこのような大事なときに遅刻するような人間でないことをお話したところ、よくわかって下さり、それまでの“遅刻してきた人間”に対する冷たい態度も和やかになり、ほんとうにほっとしました。そしていいかげんな人間には厳しけれども、そうでないとわかればすぐに撤回しあらためるというやわらかさをみなさんお持ちなのだなあと感銘をうけました。それは良かったのですが、その後の英語での面接は散々でした。わたしのグループは私以外みんな英語を流暢に話す方々だったので、自分の話せなさにがくぜんとしました。
選考会がそのようだったので、合格の知らせをいただいたときは、夢のようでした。今でも私を合格させて下さった先生方には本当に感謝しています。

さてハワイ研修に1ヶ月いけることとなり、わたしはその研修の直後にCSAを受ける計画をたてました。その頃子供が1歳と3歳でしたので最初ベビーシッターをだれか頼んで一緒に連れて行こうと思っていたのですが、結局日本へおいていきました。後から考えるとそうしておいてよかったと思いました。

ハワイについて最初にプログラムの責任者の先生がおっしゃった「1にも2にも3にもとにかく英語」というのがそのとおりでした。この時点でわたしはまだリスニングにもスピーキングにも自信がありませんでした。(英会話学校に通ったり、ラジオを聞いたりはしていたのですが) ハワイではもちろん英語なのですが、日本から来られている先生もたくさんおられて、また私がクリニックでついた先生も病棟でついた先生も日本のかただったのでわからないところは日本語でもきくことができ、理想的な環境でした。ここでアメリカの家庭医の仕事を実際にみられたこと、一般的な身体所見のとり方、病棟でのオーダー、サマリー、ディクテーション、回診など、あちらのレジデントの仕事を体験できたことはとてもよかったです。しかしチームやクリニックでは自分ひとりで問診、診察、診断までする機会はなかなかなかったので、休日にERで患者さんにあたらせてもらいました。これがいちばん難しかったです。まだまだ自分の力のなさを実感しました。そして最後にCSAの模擬のようなテストを受けたのですが、結果は6割くらいしかとれず、問診の途中で行き詰ってしまい、最後までたどり着けない感じでした。

その後フィラデルフィアでCSAを受けましたが、やはり最後の説明までたどりつけなかった患者さんの方が多く、診断がわからなかった患者さんもいました。今から思うと明らかに準備不足でした。英語力が足りないのですから、もっともっとシミュレーションをして、この主訴ならば、これこれこれをきいて、こう診察して、こう説明するというところまで、時間を測って何度も練習しておくべきでした。日本でもハワイでも、だれかつかまえてそういう練習をして、それからERでもっと問診、診察をさせてもらうべきでした。あと、やはり患者さんのいうことでききとれないところもかなりあったので、英語力もまだまだでした。
その後やはり不合格通知を受け取り、これは勉強の仕方をかえないとだめだなと思いました。
まずはやはり英語ということでインターネットでも英会話をはじめました。今はインターネットで早朝でも夜中でもネイティブの先生と話せるので便利です。その先生にお願いして毎回主訴を決めて問診、診察(もちろん会話だけですが)、疾患の説明をロールプレイで練習しました。またカルテは必ず英語で記載するようにし、主訴毎にHPIを書いて、ネイティブの先生に添削してもらいました。そして、USMLEの3つのStepを7年以内に合格しないといけないという7年ルールを考えるとぎりぎりかなと思われた2002年の12月に、カプランの5日間コースを受け、その直後に2度目のCSAを受験できるよう申し込みました。
カプランの5日間コースはCSAの対策としてはすごくよかったです。問診ではとにかくBasicをおとさないこと、LIORAAA(Location,Intensity,Quality,Onset,Radiation,Associated Symptoms,Alleviating Factors,Aggravating Factors)や、PAMHUGSFOSS(Previous Events,Allergies,Medications,Hospitalization,Urinary,GI,Sleep,Family,OBGYN,Sex,Social)をたたきこまれました。前回は細部にこだわりすぎて重要なことを落としていたのだなということがよくわかりました。以前の発作のことにこだわって薬のアレルギーを聞き逃したり、症状が始まったときの状況ばかり詳しく聞いて最終月経を落とすというようなことを絶対にしてはいけないといわれました。(実際の臨床でもそうですよね)あとはHEENT,Neuro,Musculoskeletal,Cardiovascular,Pulmonary,Abdominalとそれぞれ系統でわけて、いかに短時間で決められたBasicな診察をするか(Inspection,Auscultation,Percussion,Palpation)を生徒同士で何度も練習しました。
そして試験当日、カプランで一緒だった人と同じ日の受験だったのでお互いに励ましあったりできたのもよかったです。誓約したので試験内容にはふれられませんが、やはり練習しておくことが大事だなと思いました。カプランでの模擬試験でだいたい時間の感覚がつかめたので当日時計は使いませんでした。主訴から考えて説明まで終らせるためにはどのくらいで次の質問に移るか、どのくらいで身体所見に進むかなどの判断が大切だと思います。あとはある程度体に覚えこませておくと次に何をすればいいかがわかっているので患者さんの反応にも対応しやすくなると思います。

CSA合格の知らせはなによりもうれしいことでした。そして私の場合7年の期限がせまっていたので少し休んだ後、Step3の勉強を始めました。
とにかくたくさん読まないといけないのと疫学の問題が結構あること、あとCCSというやったことのない問題があるのが恐怖でしたが、やり方になれれば、病棟や外来でやっていることと同じことなのでまあなんとかなり、これも無事合格することができました。
Step3に合格したのが今年の夏でしたので、そのままApplyしてしまいたいところだったのですが、種々の事情により来年の夏をめざすことにしました。まだまだ英会話力が足りないので来年までインタビューにむけてもっともっとリスニングとスピーキングを頑張ろうと思っています。USMLEの点数が良くないので、はたしてマッチングするところがあるかどうか非常に心配ですが、何歳になってもハワイでお会いした家庭医の先生のような医者になれることをめざしてやっていこうと思っています。
野口医学研究所の皆さんのおかげで、アメリカのFamily Medicineを実感でき、タフでユニークで誠実なハワイの先生方とお会いでき、短期間でしたが一緒に働けて、本当によかったです。

これからもたくさんの方がこの制度でアメリカの医療にふれ関わっていくことは素晴らしいことだと思います。わたしも臨床留学がかなったら、そういうかたがたのお手伝いがすこしでもできたらと思います。