設立20周年おめでとうございます。設立の頃より間接的に研究所についてはよく存じ上げておりました。それは米国フィラデルフィア市のジェファーソン 医科大学のGonnella教授が理事に就任していたからです。私は23年前の 帝京大学の耳鼻咽喉科学教室に在籍した時に、当時ジェファーソン医科大学の医学教育・医療研究センターのセンター長であったGonnella教授のセンターに留学し、そのセンターの研究員の皆さんから一対一対で医学教育に関するカリキュラムプランニングや教育の評価を半年間学ぶ機会がありました。Gonnella教授は私が帰国してから数年して医学部長になり、その後約20年近くその責任にありました。同時に野口医学研究所の理事に就任し、応援してこられました。
私自身が東京大学に赴任したのは11年前ですが、それと同時に野口医学研究所のセミナーや米国への留学生の選考会に参加の要請を受けるたびに、時間の都合のつく限り出席してきました。その経験を通して感じたことは、私の知っている限り、多勢の審査委員で厳格に選考をし、米国に留学生を派遣することでした。このような事業は文部科学省の特殊法人がすべきことではないかと思ったことでした。野口医学研究所という民間の組織がその事業の収益の一部を医学教育の国際事業に20年も生かして来たということは驚きです。
我が国が留学生を海外に派遣する歴史は1400年前の遣唐使に遡ります。奈良平安時代から中国に留学生を派遣し、彼等が中国の文化や中国医学を学び日本に伝えたのです。徳川幕府は幕末にオランダへ留学生を送りました。明治になるとドイツへ次々と医学を学ぶために留学生を送りました。大きな成果を上げた一人に北里柴三郎がおります。現在のように米国へ留学するようになったのは第2次大戦後です。戦後の貧しく、大学も設備も古い時代に、豊かな米国への留学はまさに研究のパラダイスへ留学するような時代でした。それは世界でも 豊かな国になった米国の医療が世界最高水準にあると見なされているからで、若い医学生は、それを見たい、経験したいという願いを持つ人が少なくないのです。それに英語での生活への好奇心もあることでしょう。そのような願いや夢を持つ医学生に機会を作ってきた野口医学研究所に大学の教官の一人として感謝すると共に研究所設立20年をお祝い申し上げます。 |