米国財団法人 野口医科学研究所

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留学体験記
 ハワイ大学での研修を終えて
                                          東海大学病院 総合内科
                                            本田 仁

この度は野口医学研究所の20周年記念誌に寄稿させていただく機会を与えてくださったことに感謝いたします。同時に現在、米国臨床留学夢半ばの自分にとってこのような堅守の機会を与えてくださったことにあらためて野口医学研究所と緒先輩方に感謝いたします。私にとってこれまで与えて頂いた米国での研修のチャンスとそこでの経験は大切な財産だと感じています。本稿では2003年10月にUniversity of Hawaii のMain Hospital のひとつであるKuakini Medical Centerにての1ヶ月の研修についてエクスターン総括を述べ、野口医学研究所と本プログラムに対する感謝の気持ちにかえたいと存じます。

 

私は今回野口医学研究所の奨学金制度のもと、2003年10月6日から10月31日までの4週間ハワイ大学のKuakini Medical Centerにて内科研修をさせていただく機会を得ることが出来ました。エクスターンとして行くことが自分にとって米国の医療を垣間見るためには貴重な機会であり、みなさんに実際のエクスターンとして行ったことについて簡単に報告させていただきます。


Kuakini Medical Centerはハワイ大学residency programの中において中核の3病院のひとつであり、ホノルル市街からは少し離れたところにあります。患者層はハワイの現地人の方から日系人や日本人の方々も大勢おり、地域の基幹病院としての役割を果たしている病院です。Kuakini Hospitalの入院患者の受け入れは日本と大きく異なり、まず近くにたくさん開業されている先生方が、この病院に自分を登録しており、自分のかかりつけの患者が急変し入院が必要になると、その患者が入院されてきます。(米国ではある程度の人々が自分のかかりつけ医を持っています)Kuakini Medical Centerにて研修している研修医は自分のチームに登録されている開業医のかかりつけの患者さんを診ていき、状態が良くなれば、また開業医の下に返す仕組みになっています。このシステムから大きく日本と異なるためはじめは非常に困惑いたしました。私はその中の内科チームにつきそこでそのチームが持っている患者さんを一緒に診させていただくことになりました。私のチームのAttending Doctorは腎臓内科専門医のDr Y.G、レジデント(PGY2)はシンガポール出身のDr.K.K.Yeoとハワイ大学卒業のインターン(PGY1)Dr Daniel Kidaniでした。


内科の研修の朝は非常に早く、私は朝4時30分くらいから病棟に患者さんの診察をしました。私は在沖米国海軍病院にて米国の医療には少し慣れている部分もありましたが、それでもやはりシステムなどの面でわからないところも多々ありましたので、患者さんを診察してカルテを書き終えるまで一人当たり最低30分くらいはかかってしまいます。しかしながら数日過ぎて慣れてくるとレジデントのDr.Yeoは私にもPGY1と同様に自分の患者さんを持ち、診察し、方針も自分で決めて教えるようにとのご配慮をいただきました。後に朝の7時くらいより30分かけてレジデントとインターンとでチームの患者を診て廻ります。レジデントは1年すでに医療を経験されていること、さらに私のチームのレジデントは自国で数年内科研修をされてこられている方であり、非常に回転が早く、指示も的確でした。その後曜日によって異なりますが大体7時30分から9時より、自分のattending doctorとのmorning round 及び 他のattending doctorとのmorning reportがほぼ毎日あります。この場はインターンが一症例を発表し、ほかのチームも集まってその疾患についてdiscussをしていく場であり、attending doctorはその都度、必要に応じて講義をその場でしてくれます. 私はこのmorning reportが非常に教育的であり、毎回楽しみでありました。またこれらのmorning reportの司会を務めるのがチーフレジデントのDr. Jason Dinhであり、彼は症例に関する毎回大事な論文をみんなにコピーしてきて説明しみんなで同じ知識を共有することに非常に力を注いでおられ、米国の医療はこのような努力から医療が標準化されているのではないかと感嘆いたしました。

その後再び病棟業務に戻り、11時30分からは毎日ICU Roundがあります。これはICUに自分の患者がいなくても出席する必要があります。ここで症例を発表し、Intensivist(集中治療室専門医)から治療方針について助言を頂き、さらにそこでまたIntensivistによる小さな講義があります。私も自分の受け持った患者さんがICUにいるときに何回かプレゼンテーションをしました。短く、要点だけを話すのは実際難しく、前日から準備をしてのぞむこともありました。私は集中治療にも興味がありましたのでここでの話はありがたい話ばかりでした。


昼食の後に再び病棟業務に戻り、大きな変化がなければそのままSign off noteというものを作ります。これは当直のチームに自分の患者を申し送るためのもので、これを作り、夕方から明朝までは当直チームとnight float doctorが見ます。大体4時くらいに申し送りがありその後は解散となります。
これにて一日の業務はほぼ終了です。ただしおわった後は自分でいくつか論文を調べたり、勉強に費やしたりします。米国にはin service examというものがあり、研修中に試験があります。これはUSMLEのような試験であり、この成績は後のFellowship応募の際にも重要であります。わたしが研修していたときはちょうど試験のときであり、みな勉強をしていました。

当直については4日に一度のペースで廻ってきます。当直チームは他のチームの患者さんも診ます。
基本的には夜7時まで見ます。その後はnight float doctorが病棟業務はしてくれます。
当直チームは夜間に運ばれ入院を必要とする患者の初期治療および、明朝までのケアをします。
大体、ほぼ5人は夜間に入院するくらいはきます。結構夜間に重症の内科の患者さんが来ることがありますので大変です。さらにレジデントにdecision makingがゆだねられているのでレジデントは総合的な知識を要求されます。


もうひとつ米国研修での特徴のひとつにDictationがあります。これは自分の患者さんの入退院の際のサマリーを電話を通じて録音し、それが後にタイピングされてカルテに戻ってきます。これは私にとって慣れるまでは結構大変でしたが、書くよりも楽であり、私は好んで練習させてもらいました。


毎週木曜日はDr Littleとの英語の研修がありました。これは日本人のためにDr Littleがプレセンテーションの方法を教えてくれるものであります。私は、以前の選考会のときにDr Littleにお会いしていたので、彼女も良く覚えていてくださって、楽しい授業でした。やはり米国で重要なことはきちんとoral presentationできるということです。しかもそれは非常に簡潔で、まとまりのあるものでなければなりません。Dr. Littleは常に“Pertinent”にとこの言葉を繰り返しておられました。さらに日本人によくありがちな発音の問題なども的確に指導していただきました。


ハワイ大学には幾人かの日本人内科研修医の先生方が研修されています。私もその中の先生方を知っていましたので、非常にお世話になりました。大学の先輩でまた沖縄米国海軍病院の先輩である岸本 暢将先生、沖縄県立中部病院で研修をされていた伊藤 大樹先生、さらに同プログラムにも参加し、以前から親交のありました神谷 亨先生、同プログラムに参加し、沖縄米国海軍病院の先輩でもある藤吉 朗先生などほかにも日本人の先生方が活躍されておられ、一緒に食事をし、米国医療について多くの談義をする機会があり貴重なお話をいただきました。


このように一ヶ月ではありましたが米国での医療を垣間見ることが出来ました。私が研修をしていて感じたことは研修医を教育していくシステムにおいて非常に充実していることが挙げられるかと思います。基本的には研修医で意見を出し合い治療方針を決定していくところに大きな意義があります。さらにその治療方針をカバーするに有り余るattending doctorとのmorning reportやICU roundがあります。この点が米国臨床研修システムの特徴であると私は考えます。さらに多くの研修医がNew England Journal Of Medicineなどの論文を読み、それを臨床に実践しようとしているところにも感銘をうけました。そして個々の努力もさることながら、研修医のレベルをある一定以上に保てるようにするシステムが確立されているところに米国医療の強さを感じざるを得ません。一方、米国医療は経済との結びつきは非常に強く、時に経済が医療よりも先に優先されることがあります。在院日数が時に短すぎると思うほど短いこと、保険の問題で病院を変更せざるを得なかったりすることなど、倫理観とのはざまで時に悩み多きところでもあると感じました。しかしながら米国短期臨床留学は私にとって非常に有意義な時間であり、また参加したいと思ったことは言うまでもありません。


最後にハワイ滞在中に特にお世話になりました神谷先生夫妻、伊藤先生夫妻、そして岸本先生夫妻、昨年の選考会において選考してくださった、佐藤隆美先生をはじめとする選考委員の諸先生方、ハワイ大学研修のためにいろいろな準備にご協力をいただいた野口医学研究所のスタッフの方々、さらにハワイ大学研修のための時間を快く許していただいた東海大学病院総合内科、高木敦司教授をはじめとする諸先生方にあらためましてこの場をお借りして感謝したいと思います。